第9話チートな彼のデート始動
二日後、いよいよサイガ様とのデート当日となりました。同じ屋敷に住んでいるので待ち合わせも何も無いのですが……一応二人で取り決めて、朝食が終わって1時間後に玄関先に集合する事になりました。
私は昨日買ってきた新品の服に袖を通し、玄関先に向かいます。
洋服はよくわからないので、店の人に進められるまま購入しましたが、サイガ様に気に入っていただけるでしょうか?
ドアを開けると、サイガ様は既に玄関先に待機しておられました。
いつもの装備とはまた雰囲気の違うおしゃれな服を身に着けていらっしゃいます。
異国の貴族だと言われれば納得してしまいそうな上品な着こなしで、私は思わず見惚れてしまいました。
「サイガ様、準備ができました。お待たせしてしまいましたか?」
「い、いや、そうでもないぞ。俺も今準備できた所だからな。」
私が声をかけるとサイガ様はこちらに振り向いて、それから口をもごもごとさせながら返事を返しました。
「そのお洋服、とっても素敵ですね。サイガ様によく似合っています。」
「そ、そうか。ありがとう……ロロテナのその服も、すごく似合ってる。その……綺麗で、見とれてしまうくらいだ。」
「ありがとうございます。」
サイガ様に服装を褒められた事が嬉しくて、私はつい頰が緩んでしまいました。
今までも新しい服を着た時は似合っている、かわいいとよく言われたものですが、なんというか、その時とは言われ方が違うのです。
これがデートの効果なのでしょうか?なんだか、心がどきどきしてしまいます。
「その、なんだ。そろそろ行くか?」
「は、はい!……あの、サイガ様。」
「どうした?」
「……庭を出るまで、手を繋いでもよろしいですか?」
私は恐る恐るサイガ様に尋ねます。手を握るなんて事今までした事が無いので、断られたらどうしようと不安にしていると、ぱっと手を取られます。
温かく、いつも武器や道具を握っている働き者の手です。
「これでいいか?」
「はい。……ありがとうございます。」
それから私達は二人で手を繋いで、ゆっくり門へと向かいました。こうして手を繋ぐのは初めてでしたので、なんだか少し気恥ずかしいです。
恋人なら普通の事なのでしょうが、なんだかステップを何段も飛ばしているような気持ちになってしまいます。
私の手を握るサイガ様はというと、無表情に近いながらも少しだけ顔を赤くしています。普段あんなに堂々とされているのに、こういう所で照れてしまうのがかわいらしいです。
「……なんだ?俺の顔に何かついてるか?」
私が思わずじっと見つめていたら気づかれてしまいました。
「いえ、なんだか幸せだな、と思いまして。」
つい数日前まではサイガ様とデートをするだなんて考えたことも無かったのに、今はすごくサイガ様の事が気になってしまっています。
きっと、これが恋なのでしょう。
「俺も幸せだぞ、ロロテナ。」
「ふふ、そうですか。とっても嬉しいです。」
門までの道はほんの数分程で、すぐに着いてしまいます。
名残惜しいですが、手を離します。サイガ様は人気者ですから、大通りで手を繋ぐなんて恋人同士がするようなことをすれば、一躍噂になってしまいます。相手が女性の方ならまだしも、男が好きだなんて知られたらどんな扱いをされるか分からないと、サイガ様は仰られていました。
「……帰りも繋いでいいか?」
顔を真っ赤にしたサイガ様が、ぼそぼそと小声で聞いてきます。
「はい、もちろんいいですよ。」
手を繋いでいなくとも、街中で晒していたら噂になってしまいそうなお顔をされています。
まあその時はその時、サイガ様が好きな事を好きでいられないなんて事がありましたら、別の国へ逃げればいいだけの事です。
「じゃあ、行くか。」
いつものようにサイガ様の隣に付いて、歩き始めます。
背が高くなったおかげで、空も、サイガ様のお顔も、今までよりずっと近い所にあります。
前も話をする時に顔を近づける事はありましたが、だいたいどれも一時的なもので、こんなに長い間顔が近い場所にある事はありませんでした。
サイガ様の美しさを再度確認してしまいます。こんなお顔で颯爽と助けられては惚れない理由が無いというものです。
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