第8話チートな彼のスピード復興
多数の冒険者やサイガ様の協力もあり、数日で商業区は片付き、活気を取り戻して行きました。
私も瓦礫の掃除や、持ち主のわからない魔道具たちの鑑定や持ち主探しなどを行いました。不安な顔をしながら避難していた人々に、笑顔が戻ったのを見ると達成感を感じます。
「ありがとうございます!商品は無事でしたし、これなら明日にでも営業再開できそうです!」
壁にいくつも傷をつけられてしまった本屋の店主さんが、サイガ様に何度も頭を下げています。私もここで本をよく買っているので、店を畳んでしまうなんて事にならなくて良かったと思いました。
「それは良かった。ロロテナが贔屓にする店だからな、潰れたら俺も困る。」
「ふふ、サイガさんはロロテナさんのことをよくご存知なんですね。今日、ロロテナさんはいらっしゃらないんですか?」
「……その、彼がロロテナだ。」
サイガ様が店主さんに私を紹介すると、彼は目を丸くしました。
「え!?ロロテナさん!?た、たしかに雰囲気は同じですが……だ、大胆なイメチェンですね……?」
髪を切るならまだしも、種族が変わるなんてそれこそ、大魔道士か呪いの道具でしかできません。急に知り合いが別の種族になって驚かないわけがありません。
むしろ、大胆なイメチェンで済ませる事にした店主さんの気遣いをすごく感じます。
「サイガ様に頼んでこの姿でいさせてもらうことにしたんです。」
「よ、よくわかりませんが、あのサイガさんのすることですからね。なにかお考えがあっての事なんでしょう。」
店主さんは納得してくれたようで、深くは追求してきませんでした。
「お礼はまた後日お屋敷のほうに送らせていただきますね。」
「ああ、また何かあったらロロテナに言うか、依頼書でも出してくれ。」
店主さんの言葉を聞いて、私とサイガ様は本屋を後にしました。
「もうすっかり復興したな。」
「はい、犯人も捕まって良かったです。」
数日前の荒らされた商業区が嘘のように、区画は綺麗に掃除されていました。人々の表情も明るく、もうすでに営業を再開している店もいくつかあります。
サイガ様もこの景色を見て満足げにされておられます。
「サイガ様。」
「ん、なんだ?」
「商業区が復興してきましたので、その、デートをしていただけませんか?」
「そ、そうだな、約束したからな。もちろんいいぞ。い、いつにする?」
サイガ様は緊張した面持ちでこちらを向きます。
私がこの姿になった日から、私が少し恋愛的な話題を出すとすぐに彼は少し落ち着きのない様子になってしまわれるのです。私にはそれがとてもかわいらしく見えてしまいます。
「そうですね、明後日はいかがでしょうか?」
どうせなら、しっかり準備してデートに望みたいです。デートに対する知識は少ないですが、相手に楽しい気持ちになってもらう事が重要だということはわかります。
「ああ、いいぞ。それじゃあ明後日にデートでいいか?」
「はい。当日が楽しみです。」
サイガ様に楽しんでもらえるよう、しっかりと準備をしないといけませんね。
夕日を浴びながら、私達は並んで家路につきました。
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