第5話チートな彼のモンスター討伐
サイガ様がお酒に弱いことが判明して数日、武器に付けて簡単に効果を付与できるというウェポンアクセサリーをサイガ様はせっせと作られていました。
店に卸すためだけでなく、将来伴侶となる方に手作りの品をプレゼントできるように、と一つ一つに心を込め、細かい装飾や刻印をしているようです。
朝から根を詰めていらっしゃるサイガ様にお茶を入れていると、窓の外からこの屋敷を震わすほどの叫び声が聞こえました。
[GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!]
そう遠くないと思えるほど大きな叫び声です。一体何があったのでしょうか。走って窓の外を見てみると、街の商業区あたりに大きな魔物が出現しているのが見えました。外から移動してきたのならもっと騒ぎになっているはずです、きっと何者かが召喚したのでしょう。
「あれは……トレジャースタチューか?いや、それにしては大きすぎるが……とにかく行くしかなさそうだ。」
サイガ様はすぐに装備を整えて、戦闘体制に入りました。
「ロロテナ、着いてきてくれるか?」
「はい!お供いたします!」
「これを付けとけ、大体の呪いは無効化できる。アイツは身体の呪具を使って騒動を起こすからな。周りの魔道具や呪具を自分のものにするから、早い所片付けないと。」
サイガ様から投げ渡されたゴーグルを付けます。おや、壁越しなのにトレジャースタチューの位置がわかります。建物に囲まれた場所で戦うわけですから、何処にいるかすぐに分かるのは便利そうです。
そうして私はサイガ様と共に屋敷を出て、魔物の元に急ぎました。
商業区に着いた頃には、そこら中パニック状態でした。冒険者がトレジャースタチューを討伐しようと試みるも、ほとんどの攻撃が通じず、時間稼ぎにしかならない状況に陥っているようです。
「俺はアイツを食い止めてくる。ロロテナ、避難誘導を頼むぞ。」
「わかりました。サイガ様もお気を付けて。」
サイガ様は剣を抜いて、トレジャースタチューに向かっていきます。サイガ様が地を蹴ると、一瞬にしてサイガ様の姿は消えて、魔物の体が魔法の鎖によって縛られました。
私は冒険を始めて一番最初に頂いたマフラーに魔力を込め、ふわりと宙へ浮き上がります。背の低いスクイーラ種ですが、こうして宙に浮けば他種族の注目を集める事ができます。
「皆さん落ち着いて行動してください!現在サイガ様がモンスターを食い止めています!走らず、私を目印にして中央区へと移動しましょう!」
サイガ様が戦っているという事に安心したのか、パニックに陥っていた人々はぞろぞろと列を作ります。
何度も声を掛けながら、私は中央区の避難所まで案内をしました。
避難が済み、私は不安になりつつも、邪魔になってはいけないと中央区の上空でサイガ様の戦う姿を見ていました。
サイガ様の剣戟が、トレジャースタチューの取り込んだ道具を崩していきます。召喚された場所が場所ですから、多くの魔道具たちを取り込んでいるのでしょう。最初に見たときよりもずっと大きくなってしまっています。
大きな一撃が体を抉り、トレジャースタチューのバランスを崩したかと思うと、そいつは再度道具を取り込み出します。サイガ様はすぐさま離れますが、先程まで手に持っていた剣がありません。もしかして、取り込まれてしまったのでしょうか。
サイガ様は魔法を次々に繰り出しますが、剣と比べあまり効いているようには見えません。
その時、耳につけた通信ピアスに連絡が届きます。
『ロロテナ!俺だ、サイガだ。剣が取り込まれた。そこに魔法付与されてない打撃武器はないか?流石に素手じゃ分が悪い。』
「少し待ってください、探します!」
私が普段持ち歩く武器と言えば護身用のナイフくらいのもの。ですが、流石にトレジャースタチューとの戦闘にナイフでは力不足でしょう。
サイガ様が使う武器、迅速に良い物を見つけて渡さなければなりません。屋敷に戻るより武器屋で探したほうが早いでしょう。代金はまあ、カウンターに置いておけばいいでしょう。とりあえず、トレジャースタチューの動きを止める事に専念するサイガ様に通信を飛ばしておきます。
「サイガ様、武器屋に向かって見繕ってきます。」
『頼んだ!』
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