第4話チートな彼のリベンジ不発
サイガ様は応募してくださった人一人一人に面接されていましたが、応募用紙の時点で不採用にしてもいいのではないかとも考えました。
街の掲示板の一角を借りて、書類選考を通った人のみが面接を受けられるようにする。これなら時間も削減できるでしょう。
女性の応募が多い問題ですが……対処法が思いつきませんね。書類選考で女っぽい名前を落とすようにすれば減るでしょうか?しかしそれでイケメンを逃すのも嫌ですね……
そうして私はメンバー募集周りの改善を図って行きました。
サイガ様も暇があれば色んな場所に赴きメンバーもとい未来の伴侶を探していらっしゃるようです。
最近は性転換の魔法の研究をされているとか……ふとしたときに「変身魔法って性転換魔法のベースになると思うか?」と聞かれましたが、私は魔法についてさっぱりなのでわかりませんと答えておきました。
そして書類選考を通った方の面接の時間がやってきました。1人目は眼鏡を掛けた若い真面目そうなドルアデス種の男性です。ちら、と隣にいるサイガ様の姿を見ると、目が普段よりきらきらしているのが伺えます。これは初めての合格、ですかね。
「なぜ俺のギルドに入ろうと思ったか、理由を聞いてもいいか?」
「はい、僕は幼い頃冒険者になるのが夢でした。体を動かす才能がなく、親にも反対され、今まで薬草屋の一人息子として生きてきました。しかし、今回サイガさんのギルドメンバー募集を聞いて、小さな頃の夢に近づけるのではないかと考えたのです。僕の子供も冒険者に憧れており、妻もせっかくなら貴方のしたいことをしなさい、と背中を押されたので今回応募させていただきました。」
サイガ様の目から光が失われていくのが感じられます。妻子持ち、でしたか。これは残念ですが、仕方ありませんね。
「そうか……ありがとう。」
それからいくらか質問やお話をして、保留という事にして解散しました。ちなみに今日の面接の他の2名は女性の方でした。
せっかく出会えた方が妻子持ちだったのは悲しいですが、それを無理やり引き剥がそうとしないサイガ様はお優しいお方です。
「ああ、やっぱり今回も駄目だったよ。」
壁に寄りかかって、明後日の方向を見ながらサイガ様はぶつぶつと呟きます。サイガ様が女性に興味がないと分かった以上、アピールしてくる女性が少し不快にさえ思えてきます。
「サイガ様、諦めてはいけません。まだ男性はこの地に星の数ほどいるのですから!」
「うん……」
一応は受け答えしてくれますが、あまり元気がありません。今日は、お酒でも用意しますかね……
「これは?」
「ヴィスクですよ。ここ最近忙しいので、息抜きにでも、と思いまして。」
とぽとぽとグラスにお酒を継いでいきます。ちなみに私のポケットマネーから用意したちょっといいお酒なのです。
飲むのはこれが初めてですが、かなり評判のいいもので、期待に胸が膨らみます。香りを嗅ぐだけでも上等なものだということが感じ取れて、わくわくしてしまいます。サイガ様に出会えなかったら、こんないいお酒を飲むなんてできなかったことでしょう。
そういえば、サイガ様がお酒を飲まれるのは初めて見ます。お口に合えばいいのですが……
グラスを傾け、チーズを乗せたクラッカーを食べます。やはり美味しいですね、値が張るだけはあります。
美味しそうに飲むサイガ様を見ていると、私も嬉しくなります。
「うん、なかなかうまいな。ありがとう、ロロテナ。」
「はい、お気に召しましたらなによりです。」
その後お酒を飲み交わしながら雑談をしていると、サイガ様の口数がどんどん多くなってきました。なんだか、考えたことが全部口から出てしまっている感じです。
「はあ……ここに来た時はハーレムだ!って思ったのになあ、そんな物語みたいにうまくいかないか。このままだと一人をつかまえることすらできずに死んじゃうかもな。」
サイガ様は顔を真っ赤にして、嬉しそうな、それでいて悲しそうな顔でぼそぼそと喋っています。これは想定外でした。サイガ様はかなりお酒に弱いようです。
「そんなことありませんよ。サイガ様ならどんな方でもきっと捕まえられますから、もっと自信を持ってください!」
「うん……ありがとう、ロロテナ……」
ソファにもたれかかって、身体をすべらせて落ちそうになるサイガ様を支えると、サイガ様は急にふにゃふにゃと笑いだします。
「ロロテナが酒につよいのって、なんか意外、かも……ゆるキャラみたいだから子供なのかと、おもってた……」
ゆるキャラ、とは何でしょう。時折サイガ様はよくわからない言葉をお使いになります。しかし、子どもと思われていたなんて……話には聞いていましたが、スクイーラ種は本当に他種族から年齢がわからない種族なんですね……これでも私、サイガ様より年上なのですが……
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