第13話 お互いの気持ち
︎︎さすがに今回の友晴と紗良さんの態度は気に入らなかった。お嬢様は自分自身で身を守れないとか言ってたが、本当にそう思ってるのなら勘違いも甚だしい。
︎︎俺が教室であの二人組と相対していた時に、お嬢様は俺の呼び掛けに応答して先生を呼びに行ってくれたんだ。
︎︎そこで動ける勇気を持っているお嬢様が自分の身を守れないわけが無い。動く勇気があれば助けでもなんでも呼んで身を守れるのだ。
︎︎元々護衛という役職があるんだからお嬢様が自分で自分の身を守れる必要は無い、自分で守れるんだったら俺たち護衛は必要なくなるだろう。
「五月雨さん、私のために言ってくれたのは嬉しいですけど……さすがに言い過ぎです。紗良の言う通り私は自分で身を守ることも出来ないですし、五月雨さんに依存しないといけない弱い人間です」
「人間は弱い生き物さ、そもそも身を守ることが出来ないからお嬢様たちは護衛を雇うんだろ? お嬢様が弱いって言うならそれは紗良さんも同じだよ、藍沢さんは違うだろうけど」
︎︎藍沢さんに関してはお嬢様として異例の存在だろう。今の護衛である雅人と一緒に護身術を学んできてるって普通じゃない……普通じゃないよな? まぁ今は藍沢さんと雅人のことはいいか。
「俺は確かに友晴より護衛をやってきてないし分からないことばかりだ。まぁ言ってしまえばまだ護衛の世界じゃなくて一般の世界にいるってことだが、そうだからこそ言えることもある」
︎︎護衛の世界で相手のお嬢様に意見を言うのが不敬なのかは知らないが、まだ一般の世界で生きている気でいる俺からしたらそんなことは知ったことじゃない。屁理屈かもしれないが、俺は絶対に友晴を納得させてやる。
︎︎まぁでも、お嬢様を悪く言われてこうなってる時点で俺も既に護衛の世界に入り込んでるようなものか。
「五月雨様、周防家に口喧嘩したというのは本当ですか?」
︎︎この話を聞きつけたばっかりなのか、有栖さんは慌てた様子で部屋の中に入って来て俺に向かってそう聞いた。
「口喧嘩とは言えないと思いますけどね、俺はあくまで相手の間違ってることは正しただけですから。それに向こうが過激反応しただけ、口喧嘩なんてしてませんよ」
「相手は周防家、その意味はわかっていますか?」
「今回は護衛同士のいざこざです。それが起こった原因はお嬢様ですが、そのいざこざの中にお嬢様を巻き込むつもりはありませんよ。もちろん紗良さんの方も」
︎︎今回は俺と友晴の問題だ、その中にお嬢様を関わらせて評価を下げる訳にはいかない。恐らくそれは相手も同じ考えだろう。
︎︎さすがに僕もさっきは熱くなりすぎたかな、まぁ許したつもりは無いんだけど。
「私があんなこと言っちゃったせいでこんなことに……本当にごめんね」
「紗良お嬢様は謝らなくていいですよ、これは僕と万葉の問題ですから。お嬢様はこの件に関わらなくていいです」
︎︎向こうだってそうするだろうし、僕だって周防家の権力を振り回すつもりは無い。そんなことしたら周防家と九条家のどちらかが消えるまで争うことになってしまう。
︎︎あくまで僕と万葉の間でのいざこざということにして、紗良お嬢様を関わらせてはいけない。
︎︎何より紗良お嬢様の好んでる相手だ、関係を完全に潰すということはあってはならない。言ってしまえば僕の方が結構不利だね、それに昔と違うから万葉の考えの方が正しいと今は言われるだろう。
「万葉くんはあくまで冷静に私たちが言ったことに反論してただけだから、はっきり言って今のところ悪いのは私たちの方だよ。友晴くんは私のことに対して過激に反応しすぎだよ、私は明確にイブのことを悪く言ったけど……万葉くんはそんなこと言ってないでしょ?」
︎︎確かにその通りだった。紗良は明確にイブのことを『何ができるの? 自分の身を自分で守れるわけじゃないでしょ』と悪く言ったが、万葉それに対して否定をしただけなのだ。
︎︎客観的に見たらどちらの方が悪いかなんて一目瞭然だった。
「それは……」
「とりあえず、今回の全ての原因は私。明日私だけでイブの家にまで言って謝ってくるから……絶対に着いてこないように」
「ダメですよ、それだと紗良お嬢様が危ないです」
︎︎何年も紗良の護衛としてやってきた友晴からしたら、紗良を一人で行動させるなんてありえない事だった。紗良もイブ程では無いが、自分の身を守ることは出来ないのだ、そのことを知っている友晴からしたら否定するのは当然のことだった。
「ダメ、私一人で行くことが私たちが見せれる最大の誠意なんだから。尾行するとかもダメだからね? それに、万葉くんなら絶対気づくよ」
︎︎そのまま僕は紗良お嬢様を説得することが出来ずに明日お嬢様が一人で行くことが決まってしまった。何かあったら当主様になんて報告しよう……。
︎︎他の人に頼むにしても誰が適切だ? 雅人はダメ、優羽はそもそも護衛じゃないから巻き込む訳にはいかない。
「気は乗らないけどメイクしてもらうかぁ……」
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