第11話 やるならば徹底的に

 ︎︎中学の時からよく問題には巻き込まれてきたが、自分以外の誰かが絡んでいることは少なかった。大体は俺に恨みを持っているやつが俺にだけ何かをしてくるだけだったが今回は状況が違う。


 ︎︎お嬢様の護衛として、お嬢様を守るためだ。中学の頃は自分だけの事だったし、やりすぎてよく先生に相談を受けてたが今は高校生で停学とか退学もある。

 ︎︎やりすぎてもダメだ、俺が居なくなったら今みたいにお嬢様の身が危なくなる。


 ︎︎だから言ってこいつらを許すつもりは無い、厳しくて毒舌だろうと俺の生活を救ってくれたからな……お嬢様のために程々に懲らしめよう。


「一応聞いておくが、こんなことをしようとする目的はなんだ? バレたら退学も有り得る、せっかく桜庭みたいな進学校に来たんだからまともに過ごそうとは思わないのか?」


「ここはお嬢様学校だからな、いい女がいっぱい居る。目的は言うまでもないだろ?」


「こいつに同じくだ」


 ︎︎うーわ、典型的なカス野郎だよこいつら。学校はあくまで勉強するところなんだからさ、そういうことしたいならマッチングアプリでも使ってろよマジで。

 ︎︎そんなカス野郎の欲望を満たすために真面目に勉強しに来てる人が犠牲になるとか考えたくない。


「今正直に自首するなら俺からは何もしないぞ。というか退学になりたくないのならそうした方がいい」


「ここでお前の口を塞げば関係ないだろ? そうだな、お前の目の前で愉しんでやるよ」


 ︎︎こいつら人数有利だからって余裕ぶってるなぁ……。俺がこいつらの目的であるお嬢様の護衛であることはバレてないだろうし、そもそも俺の事を認識すらしてないだろう。

 ︎︎入学式で結構やらかしたつもりだったが案外護衛たちの中でしか広まってなかったようだ。


「ささっとこいよ、今は部活中だが先生が来るまでに俺を倒せたらいいな?」


 ︎︎正直証拠は既にあるけど、現行犯の方が言い訳とかの無駄な時間が無くなるから先生が騒ぎを聞きつけてここに来るまで時間を稼ぎたいんだよな。ただ、お嬢様はロッカーにいるし人質に取られたりしたら面倒だし、ロッカーに意識が向かないようにしないとな。

 ︎︎幸い、煽りまくったおかげでお嬢様のことは今気に止めて無い様子だしこのまま俺にだけ意識を向けさせ続けよう。


「舐めてるだろお前。どうなっても知らないからな」


 ︎︎二人同時に殴りかかってくるけど、もちろん俺には当たらない。ここが使われてない教室で机とかが何も無くて助かった、さすがに十分に動けない状態じゃ避けれないしな。


 ︎︎しばらく避けたり、手で受けたりしてるのだが先生が来る気配は全くない。ロッカーからもこっちの様子は少し見えてるだろうし、お嬢様のためにも早く終わらせたいが手を出すと俺も罰を食らうからな。


「避けてるだけじゃ、つまんねぇよ!」


「俺は喧嘩しに来たわけじゃないんだ、変に手を出して停学とかごめんだからな。逆にお前らはもうアウトじゃないか? 俺に対して何発殴ったり蹴ったりした?」


 ︎︎わざと当たりに行ってるやつだけでも相当な数やられてると思うが、正直数えてなんかいないので分からないな。それより部活終わるのいつだろうな、ここ時計ないしあとどれ位耐えればいいか計れない。


 ︎︎それより、このまま部活が終わるまで先生が来なかったら校舎内に居る俺たちって締め出されるよな。


「予定変更、誰か先生呼んできてくれー!」


「部活中に人が来るわけないだろ!」


 ︎︎そりゃあ誰も来ないさ、ただ今この場には俺とこいつら以外にお嬢様がいるからな。


 ︎︎ロッカーから飛び出したお嬢様は、俺たちがいる場所の逆側の扉から出ていった。それを見てこいつらもお嬢様を捕まえに行こうとするが、俺がそれを許すはずもなかった。


「これで終わりだな、逃げられると思わない方がいいぞ」


 ︎︎こいつらの名前は覚えた、教室から出ていったところで先生たちに呼び出されるだけだ。まだ走って向かわれたら追いつかれる可能性があるし、少し揺さぶりをかけておこう。


「もし、お前らの悪事を最初から見ている奴がいるとしたらどうする? 一人の女子生徒と話していたところから全てだ」


「そ、それがどうしたって言うんだ。おい、誰もいなかったよな?」


「居なかったはずだぞ……」


 ︎︎見られたらまずいことしてるんだから、それを見ていた奴がいると言ったら動揺するよな。まぁ嘘なんだが、もしかしたら本当に見ていた人もいるかもしれないのでなんとも言えない。


「どうする、今からあの子を追いかけるか? 俺を好きなだけ殴るか? 結末は同じだ。お前たちのやった事が先生にバレるのは確定だ、停学か……それとも退学か」


 ︎︎お嬢様にあれこれしようとした時点で十分アウトなのだが、やるならば徹底的にだ。俺を殴ったということまで追加で話すとしよう。


「騒ぎを起こしたのは君達か? いや、言い方が悪かった、五月雨くんは被害者側だったな。お前たち二人、着いてこい、徹底的に教育してやる」


 ︎︎あいつらは先生に連れてかれて、この場所には俺とお嬢様が残った。


「その……私のために、ありがとうございます。怪我とか、してませんか?」


「大丈夫ですって、これが俺の仕事なんですから。お嬢様の方こそ、無事でよかったです」


 ︎︎途中でお嬢様がどこに行ったか教えてくれた人に後でお礼を言いに行かないとな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る