第10話 護衛なら護衛らしく

 ︎︎お嬢様の護衛として本格的に生活を初めて一ヶ月が経つが、たったそれだけの事でお嬢様から褒められた。お嬢様も一週間もてばいい方って言ってたしな、俺より前の護衛達が全員一週間でやめたと考えたとしたら褒められることなのか。


 ︎︎それで今は学校の女子生徒に呼ばれたお嬢様を校門で待ってるけど、ものすごい暇だな。もちろん先に帰る訳にはいかないし、友晴とかは既に帰っていて優羽に関しては部活だ。

 ︎︎お嬢様が部活に入らないって言うから俺も入ってないんだよな、まぁお嬢様が入るとか言ったら俺もその部活に入ることになると思うから入らなくていいけど。


「護衛って常に近くにいないといけないはずなんだけどなぁ。でもお嬢様に校門で待ってろって言われたし、様子を見に行くのは良くないか」


 ︎︎そもそも何してるんだろうな、お嬢様は部活に入ってないしその勧誘か? まぁそれだとしたらお嬢様は断るだろうし、結構しつこく来られてるんだろうか。他にあるとしたら生徒会の勧誘とかか、部活に入らない人ってだいたいそういうのに入るからだろうし。


「相手がどれだけしつこいとしても……さすがに遅すぎるよなぁ。この前のこともあるし、様子を見に行った方がいいよな」


 ︎︎俺は校舎の中に戻って、お嬢様を探し始めた。といっても何処にいるかのあては無いので片っ端に行くしかない。





 ︎︎「これは一体どういうことですか? あなたは部活の勧誘だと仰ってましたよね」


 ︎︎部活の勧誘だと言われて連れてこられた教室、中には彼女の他にもたくさん人がいて……私が入った途端鍵を閉められてしまった。その瞬間に私は確信した、嵌められたと。


「部活の勧誘なんてあんたを呼び出す口実に過ぎない、本当の目的はこっち。お嬢様って面倒なのよ、だから一人ずつ学校に通えなくすることにした」


 ︎︎もちろんこういうことが起こるのは想定している、だから常に護衛を連れているのですが……今は校門のところで待ってもらっているから居ない。相手は三人で、二人は男子、私が抵抗できる相手でもなかった。


 ︎︎私はガムテープで椅子に固定され、その上口も塞がれてしまった。


「さーてと、少し準備するからそこで大人しくしとけよ。それと……これが報酬だ、お前はもう帰っていいぞ」


「あざーす! それじゃあこれより後のことは責任追わないんで、じゃあねー」


 ︎︎三人ともこの教室から出ていって、私一人だけになりましたが……。


「んー!」


 ︎︎どれだけ力を入れても結構きつくガムテープで固定されていて外れる気配がありません。口も塞がれてしまって助けも呼べませんし、どうしましょか……。


 ︎︎それに準備とは、私に何をするつもりなのでしょうか……。怖いです……五月雨さん、早く助けて欲しいです。





 ︎︎校内に残ってた生徒会の人に話を聞いてみると、三階の一番端にある使用されてない教室にお嬢様が誰かと一緒に入るのを見たらしい。未使用の教室に呼び込むとか絶対に何かやってるじゃん。

 ︎︎お嬢様の身が危ないのは確定みたいなものだし、急ぐとしよう。


 ︎︎走って、着いた例の教室に入るとお嬢様がガムテープで椅子に固定されていた。


「お嬢様、今助けます」


 ︎︎鞄の中からカッターを取りだしてガムテープを慎重に切って、お嬢様の口を塞いでいたガムテープを外した。


「お嬢様をこんな目に遭わせた奴はここに戻ってくると思うので申し訳ないですけどそこのロッカーに隠れてもらってていいですか? 俺が合図するまで絶対出ないでください」


「わ、分かりました」


 ︎︎ここでお嬢様に何かしようとしてたのなら絶対に戻ってくる。それに、ここに向かってる途中にこの部屋に繋がる廊下に男二人が見えたから多分凌辱しようとしてたんだろうな。


 ︎︎しばらくこの教室で待ってると、ダンボールを持った男子が二人この中に入ってきた。


「あ? 誰だお前」


「俺か? ただの鍵閉め係さ。この教室は使われてないのに開いてたからな、少し確認してた」


「そうか。それじゃあ今からこの部屋は俺たちが使うから出て行ってもらえるか?」


 ︎︎ダンボールの隙間から中が少し見えているが、中には縄だったり口枷だったりが入ってる……よし、完全に黒だな。


「おい、ここにいた九条はどうした?」


「さぁ? そんなものを持ってるってことはその九条さんにそういう行為をしようとしていたってことでいいよな?」


 ︎︎さてと二対一か、最近友晴と雅人相手にやったばかりだしタイミングがいいな。護衛なら護衛らしく、お嬢様の前でカッコつけないとな!


「お前、しらばっくれるなよ? 全て知ってるだろ、そうじゃなければこんなところに来るはずもない」


「知られたからには痛い目にあってもらわないとなぁ?」


「自分より力の弱い女子相手にしか強気に出れない腰抜けが大口を叩くな。しかも愉しもうとしてる時点でお前たちはゴミだ」


 ︎︎別にお嬢様だから怒っているというわけじゃない、たとえ被害にあったのがお嬢様じゃなくとも俺はこいつらと相対していただろうな。このゴミ達にお嬢様に手を出した代償を払ってもらうとしよう。


「状況理解してるのか?こっちは二人もいるんだ、今の発言を後悔してももう遅いぞ?」


「関係ないな、お前たちは問答無用で退学になってもらう」


 ︎︎まぁでも、俺もやりすぎないようにしないとな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る