第8話 護衛、お嬢様たちの集まり

 ︎︎お嬢様の護衛とはいえあくまで高校生なので気楽に話せる友達は何人か欲しい。入学式に紗良さんを助けて、その紗良さんの護衛である友晴ともはると友達となった。

 ︎︎俺が向こうのお嬢様を助けたからか、友晴は敬語だったがすぐに辞めさせた。


 ︎︎別に俺は同学年だし、護衛内での序列なんてないんだからもっと楽に行こう、うん。友晴が他の護衛の人達も集めてきたから護衛達の集会みたいになってしまった。


「初めて聞く名前だが、実力は確かみたいだな。まぁ友晴の友達になってるやつはだいたい強者か」


「自画自賛してる自覚はあるかな?」


 ︎︎護衛とはいえ、基本的にアニメとか漫画で見るような厳格な人はいないようだ。いざっていう時以外は普通の男子高校生だ。

 ︎︎その光景を見たお嬢様に怒られたのだが、別にいいじゃん、一応こんな感じでも周りは警戒しながらなんだから。


「そういやみんなはなんでこんな護衛とかいう危ない仕事に就いたんだ?」


「元々家が周防家、紗良お嬢様の家に昔から仕えてきたらしいから僕はそのまま紗良お嬢様の護衛になったかな。ちなみにその自画自賛雅人は孤児で前の当主に拾われたから」


「前から思ってたが友晴って口悪いよな? 一人称が【僕】のくせにとんでもなく口悪いよな?」


 ︎︎一人称が【僕】だからって口が悪くないとは限らないと思うが、確かに一人称が【僕】の人って優しい気がする。でも、友晴だって護衛なんだし優しくなるのは一般の人だけでしょ。


「中学では俺以外友達がいなかった万葉が大人数で楽しそうにやってんね。俺も混ぜてもらうよ」


「おまえ、しにたいようだな」


 ︎︎もはやこうなったら護衛とか関係ないな、ただの男子高校生が集まって話してるだけだ。ただ近くにお嬢様が三人いる、しかもずっとこっちを見てる。


「紗良、友晴さんの口の悪さはもう少しどうにかならないのですか?」


「無理かな、私がどうこう言って治るようなものじゃないよあれは。まぁ護衛として変な男とか追い払ってくれるし、あのままでいいかなって」


「うちは距離を置かれすぎかなぁって思うね。一応雅人はうちの護衛だけど幼馴染だしもっとフレンドリーに接して欲しいかも」


 ︎︎護衛たちは護衛同士で、お嬢様たちはお嬢様同士で話をしているのだがお嬢様たちの方は少しが変わった。年頃の女子高生がする恋バナというやつに。


「イブちゃんはさ、最近‪優羽くんとどうなの?」


「ちょ、ちょっと。近くにいるんですよ? 恋バナをするなとは言いませんが場所をですね……」


「私は優羽くんとどんな感じなのか聞いただけで恋バナなんて言ってないよ? まぁイブちゃんがそこまでしたいなら仕方ないなぁ」


 ︎︎盗み聞きしてるようで悪いけどさ、普通にこの距離だと全員に聞こえてると思うんだ。というかうちのお嬢様は完全にからかわれてるな、まぁ俺には関係ない事だから口を挟む気は無いけど。


「雅人と友晴も護衛かぁ……万葉を護衛勧誘したけど俺は別に護衛じゃないんだよな。まぁイブの副護衛みたいなものとでも思っといてくれ」


「お嬢様と幼馴染って珍しいね、君も僕と同じで家絡みの付き合いなのかな?」


「俺の親がイブの館で働いてたから必然的に関わりができた、そうじゃなければイブと知り合ってないな。まー昔とイブと今のイブじゃだいぶ変わってるや、まぁ単純でからかいやすいのは変わってないけどな」


 ︎︎向こうで恋バナをしてたお嬢様がこっちにやってきて優羽の肩に手を置いた。そりゃあ向こうの会話がこっちに聞こえてるんだったらこっちの会話も向こうに聞こえてるよな。


「有栖さん、後でゆっくりお話しましょう。私が単純じゃないということを証明してみせます、今日私のお家に来てください」


「イブの家に行くのも三年ぶりか、楽しみだな。昔とは違って万葉もいるしな」


 ︎︎お嬢様に悪いけど、優羽にからかわれるのが目に見えてるんだよね。だって、紗良さんのあんな簡単な手法にも引っかかったんだよ? 引っ掛けるのが上手な優羽相手に証明は無理だと思う。





 ︎︎その後、結局その場にいた全員が来ることになったので俺も有栖さんのお手伝いをすることにした。もちろん料理は出来ないのでただの片付けである。


「なんで俺もやらないといけないかねー。まぁ周防のところと藍沢のところの娘が来るならやらないといけないか」


「そもそもお嬢様から言われた時点でやらないといけないと思いますが? 別にいいじゃないですか、ただの片付けなんですから」


「俺は料理の方が掃除より好きなんだよな」


 ︎︎……あんな筋肉モリモリマッチョマンなのに料理好きなんだ、意外である。


「意外だと思ったか? ここに来る前までは一人暮らしだ、料理は毎日やってたからな。まぁここに来てから料理をしたことは無いな、多分今はもうできないと思うな」


「ここで働いてたらご飯も出てきますからねー、料理もしなくなりますよね。俺だってそうですし」


 ︎︎実際俺もすることなくなったし、この館には料理専門の従業員がいるからする必要がないしな。


 ︎︎まぁ掃除が終わったのでその部屋で柊さんと話していると、まず最初に優羽がやってきたが、柊さんを見た瞬間に「うわっ」と口にした。


「よぉ、女誑し」


「女誑しってうるさいですよ。俺はただ柊さんの教えを忠実に守ってるだけなんで」


 ︎︎【目の届く範囲の人ぐらいは救っておけ】、俺も教えられたが優羽の方が昔からそれをやってるんだろうな。そうじゃなければ助けてくれたお礼にっていう女の子は来ないだろうし。


 ︎︎確かに女誑しなのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る