第7話 入学式とは?

 ︎︎時は過ぎて俺は桜庭に入学することになったのだが、お嬢様と一緒に学校に向かっていると他の生徒とかにもちろん勘違いされるわけだ。もちろん俺はなんと言われようとお嬢様から離れるわけにはいかない。


「予想はしていましたけど、高校生の男女が一緒に歩いていたら疑われるものなのですね?」


「みたいですねー。俺はお嬢様の傍に居ないといけないですし、こればかりは慣れないとですよ」


「勘違いされるのがあなたとは……。まぁいいです、その方が変な男も寄ってこないことですし」


 ︎︎俺に対しての悪口は放っておくとして、他の変な男が寄ってこないというのなら、というのは俺も同感である。寄ってきたら寄ってきた分だけ俺の仕事が増えるしお嬢様にも危険が及ぶかもしれないしね。


「よう、万葉。それと三年ぶりだな、イブ」


「そうですね、お久しぶりです有栖さん。私と三年間離れてて寂しくありませんでしたか?」


「中学に入る時に俺を桜庭に引き込もうとしたやつが何を言ってるんだか。イブの方こそ俺が居なくて寂しくなかったか?」


 ︎︎お嬢様が俺の手を引いて早足になったので優羽とはそこで別れることになった。あんなこと言ったらカウンターされることぐらい分かるだろうに……お嬢様ってひょっとしたら少しポンコツなのかな。


 ︎︎入学式って校長の話とか生徒代表の話を聞くだけだと思ってたんだけどなぁ。早速不審者が出るとは思わなかったよ……けどさ、さすがに場所が悪いと思うんだ?


 ︎︎確かに今この入学式の場には向こうが求めているお嬢様も沢山いると思う。けどさ、その分俺みたいな護衛もいっぱいいるんだよね。


「お嬢様、行く必要があるのか分からない程の人数差ですけど行ってきますね。とりあえずお嬢様は安全なところに行っておいてください」


「分かりましたわ、それじゃあ貴方もお気を付けて」


 ︎︎俺が向かった頃には既に五人いた襲撃者のうちの四人は倒れていたが、ナイフを持っている一人だけがまだ立っていた。それに、どこかのお嬢様を人質している、そりゃあ他の護衛の人が動けないわけだ。

 ︎︎幸い俺は気づかれてないし、こっそりと後ろからやるとしますかね。


「お前ら動くな、一歩でも動いたらこの娘を殺す! 返して欲しければ三つの要求を呑め。一つ目は身代金……」


「お前、話長すぎ。とりあえずこんな危ないものは没収して、よいしょ!」


 ︎︎俺はそのままバックドロップを決めた。目立ちたくは無いので、警察とかが来る前に俺はさっさと立ち去った。





 ︎︎特に被害が出なかったことと、実行犯が色々情報を吐いて仲間はこの五人だけということが分かったので入学式はそのまま行われた。そして外で警察が警備してる状況で入学式は再開された。


「やっぱ護衛とお嬢様は同じクラスにされるんですね。というか危険すぎません? この学校」


「名家の子どもが集まる学校というのはこういうものですよ。中学の時にもありましたし、恐らくこれからもあるでしょうね」


 ︎︎考えたくねぇ、この街ってそこまで危険だったけなぁ。まぁこれからもあるって言うのならちゃんと護衛としての仕事を果たさないとな。


 ︎︎学校の説明など、その他諸々の話が終わって今日は帰ることとなったのだが、どうも今日は厄日らしい。


「なんの用です?」


「あんな綺麗にバックドロップかましておいて、ただで帰れると思う? うちの紗良お嬢様がお話したいだとさ」


「五月雨さんは、私の護衛です」


 ︎︎そのままお嬢様も俺に着いてきて、その紗良さんという人のことを睨みつけていた。なんかスカウトされることでも危惧してるのかな?


「紗良、五月雨さんは私の護衛、要件を言うなら早くしてください」


「え、なんでイブちゃん怒ってるの? 別に護衛さんを取ろうなんて思ってないって。ただお礼を言うだけ、OK?」


 ︎︎聞くところによると、紗良と名乗ったこの子はお嬢様のことを唯一からかったりすることができる人らしい。それにしても、死にかけたというのに呑気な人だなぁ。

 ︎︎もしかしてだけど、人質にされるの初めてじゃないな、この人。


「紗良の目的も終わりましたし、早く帰りましょう。このままだと五月雨さんがモテたと勘違いしそうですし」


「いやぁ……でも普通にかっこいいと思うけど? 頭良いし、さらっと助けてくれたし」


「護衛として当たり前ことです。五月雨さんは褒められたからといって調子に乗らないように」





 ︎︎あの後、紗良さんと連絡先を交換してから帰ったのだがお嬢様に『もう、惚れちゃったんですね。ちょろい男です』と言われた。なんで? 向こうから連絡先の交換を要求されたのに?


「五月雨さん、貴方は私の護衛です。紗良に何を言われてもついて行かないように、いいですね?」


「わかってますって。俺はお嬢様の護衛です、ずっと傍でお守りしますよ」


「プロポーズみたいで気持ち悪いですね。……まぁよろしくお願いします」


 ︎︎どんな時でも毒舌は健全のお嬢様だが、本心が丸見えなんだよねぇ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る