第6話 衝撃の事実

 ︎︎この館に来て、有栖と名乗られた時に少し思ってたことはあった。有栖って結構珍しい苗字だと思うしもしかしたらって考えたけど結局はただ苗字が同じだけっていう結論にしたがやっぱりそうだったのか。


 ︎︎え、じゃあ優羽が言ってた知り合いってお嬢様のこと? もし三人で学校生活をするとして、優羽と仲良く話していて俺だけに毒舌で厳しかったら泣く自信がある。


「あー、有栖さんって優羽の母親だったんですね。ちなみに優羽とお嬢様って知り合いだったりします?」


「中学になってからずっと会っていないはずですけど、一応友達ですね。安心してください、毒舌で厳しいのは誰にでも例外なくです」


 ︎︎何故か心読まれた。幼馴染である優羽にすら毒舌で厳しいんだったらどうにもできなさそうなんだけど。まぁ一緒に犠牲になる奴がいるなら俺の精神も持ちそうである。


「有栖のところの女誑しか、お嬢様が小学生ぐらいの時はよく遊んでたような気がするな。その時から既に今のお嬢様と同じ感じだったが」


「人の息子を女誑しというのはやめて貰えますか? 否定しきれないのがあれですけど」


 ︎︎優羽本人は自覚ないんだろうけど、行った先々でよく女の子引っ掛けてたからなぁ。まぁ優羽自身は何もしてないし、女の子の方が勝手に寄ってきてるだけなんだけどね。


 ︎︎その上その全員に優しくしてるから余計その女の子が近づいてきてるからなぁ。だから女誑しと呼ばれてるのかもしれない、柊さんもその光景を見たんだろうなぁ。


「そういやお嬢様が最近そいつと会いたいだとか呟いてたか」


「今遊ぶ時間は無いですよ、お嬢様と違い普通の中学なんですから」


「今日話してきましたけど、俺が桜庭に行くと言ったら優羽も行くって言ってましたよ」


 ︎︎お嬢様が優羽に会いたいと思ってるのなら優羽が桜庭に行くのは都合がいいのかな。……というかさっきからチラチラこちらを見てるけど、バレてないと思ってるのかな、あれ。


 ︎︎角度的に俺からしか見えないのだが、まぁ一人にバレた時点でアウトだよね。呼ぼうかと思ったが辞めておいた、お嬢様もお嬢様で優羽と同じ学校に通うことを聞いて嬉しそうだし邪魔しないでおこう。





 ︎︎部屋に戻って思ったことがあるのだが、優羽がここのメイド長である有栖さんの息子なら俺の仕事を知っているんじゃないのか。そう思って俺は早速電話をかけた。


「もしかしてだけどさ、お前普通に俺がなんの仕事するか知ってるだろ」


『あ、バレた? まぁイブは毒舌で厳しいけど頑張ってくれ、最悪俺がイブの機嫌を取るからさ。それと柊さんの相手頑張れよ、親から柊さんの試験をたった二日で終わらしたと聞いてるぞ』


「あーうん、そうだな。毎週土曜日にやることになってるけど、そもそも柊さんってどのくらい強いんだ?」


 ︎︎俺が柊さんと互角にやり合ってたことを有栖さんが驚いていたことから柊さんは相当な実力者だということは容易に想像できるが、それはどれほどの物なのだろうか。


『柊さんは万葉みたいに特別才能があったわけじゃない、努力し続けた結果があの体と強さだよ。柊さんが護衛になった経緯とかは知らないけどとにかく強い、そんな柊さんと互角な万葉はおかしい』


「勉強も運動もできて顔がいい超人におかしいなんて言われたくないな。俺は巻き込まれるからしょうがなくだ」


『そうかい』


 ︎︎まぁでも、俺がよく巻き込まれる体質でよかったと今では思う。巻き込まれるからと、護身術を学んでなければ今この仕事にも就けなかったわけだしね。


 ︎︎ただ、これからは自分の身を守るんじゃなくてお嬢様の身を守るために強くならないといけないんだ。そこは柊さんに訓練をしてもらって鍛えるとしよう。


『死ぬなよ』


「当たり前、どれだけ怪我したとしても生き残ってやるよ」


 ︎︎護衛としてどれだけ怪我しようとも死ぬつもりは無い。そうだな、死ぬとしてもあと八十五年経ってからだ。


 ︎︎この街にお嬢様を狙う奴がいるとは正直思えない、俺が見ている限りは平和だ。だけどそういうことでは無いんだろうな、そういう奴は俺たちが過ごしてる表の世界ではない裏にいるのだろう。

 ︎︎そんなことがなければ護衛など必要ないし柊さんも傷を負ってはない。


(俺も柊さんのようになるのだろうか、それともそのまま死ぬのか)


「五月雨様、夕飯をお持ち致しました」


「あ、いつもありがとうございます。そういえば有栖さんはあの時俺を勧誘した時から俺の事を知っていたんですか?」


「知っていました、というより優羽の方から頼まれたんですよ、友達を助けて欲しいと。丁度お嬢様の護衛を募集していたので貴方を勧誘しました」


 ︎︎なるほど、俺は今回も優羽に助けられてしまったというわけか。というか、どんな仕事か知っていて怪しいバイトとか言ってたのかよあいつ。


「それじゃあ優羽に感謝しないといけないですねぇ。俺の生活は優羽によって救われたと言っても過言では無いですから」


 ︎︎明日の帰りに何か買ってやるとしよう。あーでも絶対俺に奢らせてくれないわ、なにか別のもので考えておくことにしよう。

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