第5話 これからも一緒に
︎︎退去立ち会いも冬休みも終わって学校も始まったのだが、流石に学校中がピリピリしてる。中三の三学期なんてどんな学校でもこんな感じか。
「万葉、結局お前は高校行くのか? それか働くのかどっちにするんだ。前は働くと言っていたよな?」
「あぁ、俺は高校に行くことになったよ。仕事の関係上、高校に通わないといけないからな。それにお金は雇い主の方が出してくれる」
「それ怪しいバイトか?」
「ちげぇよ」
︎︎あの時言った言葉とは全然違うことを言ったが、冬休み前とは全く状況が違うからそれも仕方ない。護衛に関しては怪しくはないが一般的な仕事ではないとは思う。
「それじゃあバイトの話はいいとして、どこの高校だ? 万葉ならどこで行けるとは思うけどな。そうだな、万葉の行くところに俺も行くわ」
「あー確かにお前学年一位だもんな、お前こそどこの高校でも行けるんじゃないか?」
「それは万葉が手を抜いてるからだろうが。万葉が本気でやってたら俺なんか一位取れてないっての」
︎︎今話してるのは唯一の友達である
「それで、結局どこの高校に行くんだ?」
「
「桜庭ねぇ、知り合いもいるしそれじゃあ俺もそこに行くとするか。これからも一緒だな」
︎︎俺はお嬢様の護衛として桜庭に入るわけだし、優羽と一緒にいる時間は作れるのかね? 基本的にお嬢様と一緒にいないといけないだろうしな。
「わりぃ、仕事の関係で今までと同じようには時間作れないと思うわ」
「万葉は生活掛かってるんだろ? それじゃあ仕方ないよな。まぁ時間が作れそうなら言ってくれ、俺もそれに予定を合わせるから」
「おっけ」
︎︎俺たちの学校はこの時期になると授業らしい授業をすることはなく、先生の方が、過去問やを持ってきてくれてそれを解くという授業に変わる。ただしそれは一般入試の過去問なので特色推薦で行こうと思ってる人は自分で申し出ないといけない。
「先生ー、桜庭の特色の過去問ください。俺と万葉の分をお願いします」
「お、いいねぇ、うちのクラスから二人桜庭が出たら他の先生に自慢できる。二人とも頑張れよ!」
︎︎とりあえず優羽の机と俺の机をくっ付ける。まぁ今までずっと競い合ってきた俺と優羽がやることいったらもちろんひとつしかないよね。
「それじゃあどっちが点数高いか勝負だ。言っておくけど手を抜くなよ、俺は本気でやりたいんだ」
「負けたらジュースな?」
「乗った」
︎︎制限時間は三十五分くらい、まぁ実際の試験よりだいぶ短いが過去問とかを解く時は本番より短い方がいい。三十五分で解ききる感覚が身につくからだ。
︎︎ちなみに貰った過去問は数学、名門校の特色問題なだけであって学校の定期試験の問題とは比べ物にならないくらいには難しい。別に解けないわけではないのだが解ききれるかは分からない。
︎︎普通に考えて過去問を解く時に三十五分でやるのはおかしいんだよな。過去問で時間を減らすとしてもせいぜい五分程度だろう。
「解き終わった、けど見直しはする時間ないな」
︎︎そのままチャイムがなって授業は終わった。
「なんで三十五分で解き終わるんだよ。本番の時に十五分余裕が持てるとか羨ましいわ」
「まぁまぁ、無理やり終わらせただけだから間違ってるかもしれないし」
「いーや、絶対に全部合ってるね。これだから自分の凄さを理解してない鈍感くんは」
︎︎先生に丸つけしてもらったところ優羽は七十九点、俺は九十六点だった。
「全部ではなかったぞ?」
「三十五分で解き終わった上にこの点数取れてる時点で人間辞めてる。手を抜くなとは言ったけどここまで大差で負けると凹むな」
「いや三十五分八十点取ってる有栖も異常だと思うけどな。有栖も五月雨も学年で飛び抜けて異常だからな? テストの順位で一位が有栖か五月雨以外の時は見たことないし」
︎︎まぁ最初の試験では俺が、その後の試験では全て優羽が一位だしな。というか俺は最近二位どころか十位以内にすら入ってないはずなんだがな、先生は手を抜いてることを知らないはずだし、今異常と言われるのは優羽だけで十分だ。
「俺は最近十位にすら入ってませんよ」
「五月雨は頭良い奴がわざと間違えてるって分かるんだよ。全部授業で言った間違え方で間違えてるからな」
「万葉ってそんなことしてんの?」
︎︎確かにこんな感じで間違える人がいるだろうなぁって思って書いてたけど、なんで俺が普通にそういうミスをしたって思われないんだ。
「わざと間違ってるとしても成績がいいことには変わりないしな。受かるまで油断するんじゃないぞ」
「わかってますよ」
︎︎その後の授業も似たようなことをしてそして俺は館に帰宅した。やっぱりあんなでかい館に帰るのって慣れないな。
「五月雨様、お帰りなさいませ。久しぶりに優羽と会ってどうでしたか?」
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