第2話 館案内
︎︎まず俺がこれから住むことになる部屋を案内され、この部屋の物は自由に使っていいらしい。俺が元々住んでた部屋より色んなものが充実してるし、これからここに住めるのか。最高だな。
「少し個人的な話になるのですが、五月雨様は何か格闘技とかやられていましたか?」
「さっきの人にも言いましたけど、お金がないのでそういうのは習ってませんよ。問題に巻き込まれることが多かったので自分で身につけました」
「そ、それだけで柊様のパンチを避けられるんですか……。柊様は当主様の元護衛です。柊様もさっきは楽しそうにしてましたし、明日も頑張ってくださいね」
︎︎殴り合いで楽しんでるって相当じゃん。当主の元護衛となると色んな場面にも遭遇してきたのだろう。服から見えた肌には切り傷とか刺し傷とかが無数にあったしな。
︎︎有栖さんは部屋の案内をきちんとこなしながらもその柊さんの話を俺にしていた。
「基本的にご飯はこの従業員食堂で従業員の皆様がお食べになられるのですが、ご希望なら部屋まで持って行くことも可能でございます」
「ちなみにここの従業員の数はどのくらいですか?」
「三十ぐらいですが私含め、殆どの方は自宅から出勤されるのでこの朝に食堂を使うのは柊様ぐらいですね」
︎︎他の従業員がいっぱい居るなら部屋に持ってきてもらおうかと思ったけど柊さんしか居ないのならここで食べようかな。流石に三十もの大人に囲まれながらは食べずらいけど一人なら問題ない、まぁ昼と夜は持ってきてもらおうかな。
︎︎次は大浴場に案内されたのだが丁度柊さんが入ろうとしていて裸だった。さっきの訓練で汗でもかいたのか、そんなに激しく動いてなかったと思うけどな。
「五月雨君か、俺は君のような才ある者が来てくれて嬉しいよ。ずっと前からお嬢様の護衛は募集してたんだが、学力と護身術の両方を揃えた人はなかなか居なくてな」
「柊様、貴方の求めている護身術のレベルが高すぎるだけだと思われますが? 私は何回も言っていますよね、優しくしろと」
「優しくねぇ……。当主様やお嬢様を狙う輩がどれだけ蔓延ってると思っている? 生半可な奴を護衛にしたところで役に立たないだけだ」
︎︎どれだけの人に狙われてきたかは柊さんの体の傷が証明してくれているだろう。確かに生半可な人ではお嬢様を守りきれないかもしれないが今と昔では状況が違うだろう。
「館内の護身術指導の最高責任者は俺だ、あまりこちらの事ででしゃばって来るな有栖」
「確かに館内の護身術指導は柊様の方が上です。私は当主様や奥様が居ない時の代理当主、館内でのことである以上は私にも関わりが出てきます」
「関わりがあろうが有栖にとやかく言われる筋合いは無い。俺は当主様やお嬢様を守るために指導してるだけだ」
︎︎絶対この二人さ、意見の食い違いとかがよくあって仲悪いでしょ。というか裸の男性とメイド服を着た女性が口論してるのを眺めてる俺の気持ちも考えて欲しい。
「柊様とはいつまで経っても分かり合えそうにないですね。お見苦しいものお見せして申し訳ありません、それでは次の場所へ行きましょう」
︎︎風呂場から移動してそのまま館を一周して部屋案内は終わったのだが、正直暇である。当たり前だが元の家にあった物は持ってきてないし、そもそも暇つぶしできるような物は無い。
「俺が元々住んでた部屋はどうやって解約すればいいですか? 一応親が契約したところなんですけど」
「契約会社の方に連絡して許可を得れば代理人として認められると思います。そのためには委任状や契約者の身分証などが必要になるのですが……」
︎︎どこに行ったかが分からないから手に入れようがないよなぁ。契約書類とかは家に置いてあったはずだ。
「ひとまず連絡した方がいいですよね?」
「五月雨様の事情を考えると委任状などは必要ないと思いますが……。すみません、あまり詳しくないので説明できないです」
︎︎管理会社な連絡して今の状況を伝えると委任状と身分証は必要ないと言われたので俺はダッシュで家に帰って書類を取りに戻った。そのまま解約届けを書いたりなど色々して解約したのだがそれは数日後の話である。
︎︎そしてこの館でご飯を食べて寝たのだが、はっきり言って快適すぎた。あと五日間はここで住むことができるが、快適すぎて前の生活には戻りたくない。
︎︎そのためには合格しないといけないので、今日は怪我する覚悟を決めないとだな。
︎︎あと、解約届け提出して退去立ち会い日も決めたので合格しないと普通に家無しになる。流石にまだ数ヶ月は中学に行かないといけないので家なしでは困る。
「今日も試験頑張りますかね」
︎︎そう呟いて部屋を出た先にいたのは有栖さん。なんで俺が起きる時間にちょうど来れたのかは知らないが試験用の服を持って来てくれた。
「柊様が普段の服じゃ動きずらいだろうとの事らしいです。食堂でお待ちしておりますので、好きな時間にお越しください」
︎︎有栖さんはそれだけ口にして部屋を去っていった。特にやることもないしご飯を食べて早く柊さんの元に行くとしよう。
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