クールで厳しい毒舌お嬢様の護衛になったら

桜木紡

第1話 プロローグ

 ︎︎まずい、このままだと高校生にもなってないのに家を追い出されてしまう。今すぐにでもお金を稼がないといけないけど……まだ高校生になってないからバイトは出来ないんだよな。


 ︎︎そもそも親の許可ってところで引っかかるからどっちにしろバイトは出来ないか。


「今月は大丈夫だけど来月はちょっと厳しいかもなぁ。今の状態でもお金を稼げる方法を探さないと」


 ︎︎俺はスマホとか色んなものを使って今の俺でもできるような仕事を探して二時間が経過した。そして見つけたのが名門校に通うお嬢様の護衛、なんか胡散臭いけど俺はそれに縋るしかなかった。

 ︎︎

 ︎︎対象が新高校生だったので、応募者が俺しか居なかったのか。俺は一旦合格となり、後日屋敷に呼び出されることになった。


「これがもし本当にある仕事だとしたら俺はそのお嬢様と同じ高校に行かないといけないのか。まぁまだ冬休みだし試験には間に合うのか」


 ︎︎俺は公立高校に行ける額しか残してないしそのお嬢様の行く高校の入学費払えるかな……。まぁ俺の今の生活の状況を話せば何とかなるのかな? 今日はとりあえずそれ以上のことは考えずに眠りについた。





 ︎︎翌日、送られてきた住所の場所に向かうとアニメとか漫画で見るような館が建っていた。中に入ろうとした瞬間、俺は門の前に立っている人に睨まれたが数秒後に門を開けてくれた。


 ︎︎そういえば履歴書送った時に顔は知

られているのか。


「ようこそお越しくださいました、五月雨様。メイド長の有栖と申します。応募者は貴方様だけでしたので合格、としたいところなのですがお嬢様の護衛として相応しいか試験をさせていただきます」


 ︎︎提示された内容は学力、護身術の二つだ。お嬢様と同じ学校に通うのだから学力は必須とのことだ。そして護身術はお嬢様と護衛となるので言うまでもない。


 ︎︎合格の基準は学力分野では出されるテストで合計が九割以上、護身術分野は実技試験の結果次第らしい。


「学力試験は中学全範囲の入試に似たようなものとなります。時間は一教科五十分、それでは始めさせて頂きます」


 ︎︎学力の方に関しては習っている範囲なら心配することは無いだろう。問題は護身術の試験内容だけど、さっきの門番の人を倒せとかだったらちょっと厳しいかもしれない。


 ︎︎俺はそのまま学力試験は合格して護身術の試験に移ったが移動した場所には四十代半ばぐらいの男性が立っていた。


「君が新たにお嬢様の護衛となる五月雨君か。試験はただ一つ、一週間の間で俺に拳を当てるだけだ。君の事情は有栖から聞いている、今日からこの館に住んでもらって構わない。もちろん不自由ない生活を約束するさ、お嬢様の護衛になるかもしれない重要な種だからな」


 ︎︎胡散臭いとか思ってたけどこの仕事を選んでよかった。だって合格さえしたらご飯代とか家賃とかその他諸々払う必要が無くなるんだから。合格したらあの部屋は解約しよう。


「俺たちの使命はお嬢様を守ることだ、お嬢様に危害を加える者には情なんていらない。徹底的に叩きのめせ、二度こんな事出来ないように恐怖を植え付けるんだ」


「それじゃあ早速やりましょうか。えっと、怪我させたらすみません」


「怪我なんて気にしないさ」


 ︎︎俺は問題に巻き込まれることがよくあった。些細な問題や大きい問題も経験してきて俺が身につけたのは巻き込まれても自分の身を守る能力、向こうが求めてる護身術だ。一回電車の中に出た暴漢を多少怪我しながらも撃退したことはある。


「よっと! 相当手練のようだな。習ってたことでもあるのか?」


「お金ないので習ってる余裕なんてありませんよ。ただ問題に巻き込まれることが多すぎたので身につけたまでです」


「なるほど……それにその手の傷、刺されたことがあるな?」


 ︎︎俺の手には結構大きめの傷跡がある。さっきも言った電車の暴漢を抑える時に負った傷だが、治ったし乗客を守れたなら、俺の手くらい安いものでしょ。


 ︎︎ただ、むっちゃ痛かったし治療費を代わりに出してくれた人がいなかったらろくに治療しないまま過ごすことになるところだった。


「なかなか容赦ない拳振るってきますね……。当たったら怪我じゃ済まないですよそれ」


「まぁお嬢様に手を出す愚か者にはこれくらいはやらないとだからな。それに君は余裕そうに避けているじゃないか」


「攻撃できないんですよ。貴方の攻撃は

下手なナイフより怖いです」


 ︎︎でもこのまま避けてるだけじゃ一週間続けたところでこの人に攻撃を当てることは出来なさそうである。ちょっと左手を犠牲にしないといけなさそうだ。


 ︎︎そもそも向こうが求めてるのは何かを犠牲にしてでもお嬢様を守れる人って事なのか?


「この試験の重要な部分に気づいたようだな、それじゃあ今日の試験は終わりだ。優秀な人が来てくれて俺は嬉しいよ、お嬢様も喜びそうだ。それじゃあ有栖にでも館を案内してもらってくれ」


 ︎︎既に部屋の入口には有栖さんが居た。俺のことをずっと見てたのか?


「それじゃあ五月雨様、行きましょう。貴方の部屋を案内させていただきます」


 ︎︎俺は部屋を出ていつ終わるのか分からない館の案内をしてもらうことになった。この館何部屋あるんだよ、普通に設備とかを説明しきるだけで一日かかりそうだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る