第15話 夜襲

「スー!!起きなさい!!」

突然の大声に飛び起きる。

体を起こしただけだったとこ無理矢理立ち上がらせられる。

「何が起きたの!?」

寝起きのガラガラ声で問いかけるが横のローズの顔は緊張で強張っていた。

状況がわからずにいたが正面へと視線を向けると理解することができた。

暗闇の中に焚き火の光に当てられてキラキラと光るものがある。

2つセットでうごめくその光は少しづつこちらへと近づいてきていた。

正体はすぐにわかった。


ゴブリンだ。


父の農地に行った時木の影にいたのを思い出す。

最初は何か分からず父に聞くと、父は血相を変えてすぐさまどこかへ行ってしまった。そして父がどこからか帰ってくると私もすぐに家へと連れ戻された。

後から聞くには冒険者へと依頼を出して駆除をしてもらったらしい。

依頼完了の通達を聞いて父のほっとした顔をよく覚えている。


そんなゴブリンが今目の前にいる。

ギリギリ焚き火の光が届かないところからこちらの様子を伺っている。

数は正面に5匹はいる。

私たちの人数より多い。一対一で相手をしたとしてもゴブリンが一体手が空いてしまう。一番強いアルマに2体を相手してもらうしかない。

というかアルマはどこに行ったの?

警戒のために起きていたであろうアルマの姿が見えず辺りを見渡す。


いねぇ!!

筋肉ばかはどこか散歩に行ってしまったらしく姿が見えない。

三人で五体のゴブリンを相手にしなくては行けなくなってしまった。

「スー、カリバス。少し時間稼ぎをお願いしますの」

「「わかった!!」」


二人で五体を相手する。何を考えているのか今すぐにでもローズに聞きたいが

切羽詰まった状況ではそれが許されない。

やれと言われたらやるまでだ。


ゴブリンが一斉に飛びかかってくる。

大きさはまちまちだが全員石のナイフのようなものを持っている。

刺されたら致命傷になりかねない。


どんな場合でも私がやるのはひとつASMRだけだ。

走ってくるゴブリンを前にその場に座り込み集中する。一番前を走るゴブリンに

恩恵を発動。

『ふー』

手っ取り早く、相手の動きを一瞬封じ込めることのできる、吐息ASMRをする。

ゴブリンは人間ではないので効くかどうか不安だったが

「ギャギャ!!」

気色の悪い声をあげて突然震えて立ち止まったところを見るに通用したようだ。

突然立ち止まったゴブリンの頭をシスターが蹴り飛ばす。

殴るには相手の身長が低すぎるので的確な行動だ。威力も凄まじく

蹴られたゴブリンはバキッという骨の折れる音と主に横に弾き飛ばされる。

ゴブリンを蹴り飛ばして姿勢が少し崩れたシスターに2体目が襲いかかるが

それを許すほど私はASMRが下手じゃない。

空中に飛んだゴブリンは耳から与えられた刺激に驚きそのまま地面に激突する。

そこをシスターはかかと落としで追撃しゴブリンの首の骨を折る。


仲間が2体殺されてしまったことに驚いたのか残ったゴブリンの足は遅くなり

後を振り向いたりして慌て出す。

今更後悔でもしているのだろうか。

可憐な少女の眠りを妨げておいてごめんなさいでは許されない。

死で償わせる。そう思いASMRを準備しようとしていると横からローズの声が飛ぶ。

「カリバス!そこを離れて!!」

大声にシスターは反応して元いた場所から後へとジャンプして飛び退く。


準備とやらをしていたローズの手には燃え盛る炎の玉があり、それが一直線に

3体のゴブリンたちへと飛ぶ。

「ファイアー・ボール!」


炎の玉はゴブリンたちの足元へと着弾すると爆発し、周囲へと燃え広がる。

火が燃え移ったゴブリンたちはしばらく奇声を上げながら動いていたが数十秒後には糸が切れたように倒れてしまった。


「周囲警戒!」

ローズが気を引き締めるための指示を飛ばす。

ゴブリンは集団で狩りをする。まだ他にいないとは限らない。


そこから三人で周囲を警戒するも残党は見つからなかったが

私たちは夜が明けるまで眠ることはできなかった。

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