第13話 いざ旅へ

その場の状況が飲み込めずに立ち尽くしていると

ローズにそのまま手を引かれ冒険者ギルドへと連れ込まれる。

促されるままに何を書いているかわからない紙にサインをし、手荷物と冒険者の証明である銅のプレートを持たされる。

そしてまた手を引かれるままに歩き、気がつくと町の門の外へと出てきてしまっていた。


「一体何が起きてるの!?」

流石に黙って歩くことができずローズに声をかける。

「私たちは冒険者になりましたの。これから一緒に探索に行きますの」

「探索!?」

「そうですの」

ずんずんと前に進みながら流暢にローズが質問に答える。

違う。そう言うことが聞きたいのではない。

「二人は?」

一応後ろのアルマとシスターにも聞いてみる。

「俺たちもローズに誘われたんだよ。成人したら人間相手じゃなくてモンスターと戦いたいと思ってたし」

「アタシは暇つぶし。薬草とかあったら持って帰るわ」

やる気満々か。


思っていたのとは違う展開になってしまったがこれはこれでよかったかもしれない。

少なくともアシュラと互角に戦っていたアルマがいるのは心強い。

緊張はするが久しぶりに見る町の外の風景や仲間との旅という状況にもワクワクする。


「探索って結局どこに行くの?」

「エルフの森にある神殿ですわ。」

「エルフの森?しかも神殿?罰当たりなんじゃないの?」

「心配せんでいいよ。エルフの森にあるって言ってもうちらの神殿だし。それにもう使われてないから神もいないよ」

本当にあなたはシスターか。

使われてなくても神殿は聖域とかじゃないのか。

まあよく考えてみると遺跡探索とかだって誰かの墓を荒らしてるんだし

使われていない神殿はダンジョンとかと一緒か。

「神殿に貴重なものとかってあるんだっけ?」

「成人の儀に見んかった?うちの宗派は宝石系の道具儀式に使うからいろいろあるよ。多分」

「剣とかあれば俺がもらっていいか?」

「剣は流石にねぇと思うけどな」

「そりゃ残念」

「換金したお金で買えばいいですの」

「確かにそうだ」

「というかそんなに金目のものあるなら先に誰か取っちゃってるんじゃない」

「片道四日かかる神殿の場所なんて教会の人間じゃないと知らないよ」

「へぇー」

意外と勝算のある探索らしい。

正直早く帰りたいという気持ちが9割を占めていたが

ぶら下げられた誘惑にたぬきの皮算用をしてしまう。


ちょっとくらいなら他のものを買ってもいいよね?新しい服欲しいな〜

いや持ち帰った宝石をリメイクしてもらって自分で使うのもいいな。

でもそんなもの持ってたら余裕で強盗に遭いそう。

夢は膨らむばかりだ。


早く神殿つかないかな〜。

・・・・・四日?

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