第2話 学年主任と声
まだ2時限目だというのに意識は限界だった。
さっきの10分休みはここまで眠くなかったよな?
何度目か分からないあくびをした後、俺――
俺がこんなにも必死に睡魔と闘っているのには理由がある。
先生が怖い。
俺たちの学年が入学して二日目には「あの先生絶対おっかねーよな」という話題は初対面の子と仲良くなるための土台として機能していたほどだ。
しかし、そのタダクニに対する脅威に立ち向かえるほどの力が今の俺の睡眠欲にはある。
登校で40分間の全力サイクリング、テニス部の朝練、一時間目の体育。
朝早かった上にクタクタだ。
まあ、今までこの闘いに勝ち抜いているから今日も俺は元気に学校に通えている。
授業終了まであと30分間。
油断せずいこう、と今度は二の腕をつねろうとしたときだった。
「――ではこの理由を……飛田、答えてみろ」
俺は勘違いしていた。
「寝なきゃいい」というわけではない。
睡魔と闘うことに精一杯だった俺は、授業の内容なんて全く頭に入っていなかった。
これでは寝ているのと何も変わらない。
「はい、え、えーっと……」
動揺して席から立ち上がる。
隣の席の
とりあえず謝って、質問をもう一度聴こう。
あとは、もう神様が決めることだ。
そう俺が覚悟を決めたとき、奇跡は起きた。
「その地の領主の家族に5人子供がいたら5分割、その子供たちも5人ずつ子供がいたら最初と比べて25分割になるみたいに、時がたつほど一人当たりの土地がすごく小さくなってしまうから」
突然教室の後ろから聞こえた、誰にも聞かせる気がないような独り言のような声。
驚いて後ろを振り返っても、何も疑問を持っていないクラスの奴らの視線が刺さるだけだった。
クラスの誰も声を発した様子はない。
そして、声が聞こえていたら皆こんなに平然としていられるはずがない。
ここは男子棟だぞ。
あれは……女子の声だった。
「おい、どうした飛田。具合でも悪いのか」
タダクニの心配の声で自分の窮地を思い出す。
「あ、いや、えー、だ、大丈夫です。で、えーっと」
さんざん焦ってどもった挙句、俺は唱えてしまった。
あの声の言った内容を、一言一句違えずに。
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