旅の始まり
「アレス・クロ・ライラ、準備出来た?」
旅に出る宣言をした次の日......私達は、旅に出るための準備をしていた。
何事も、準備が大切だって言うしね。
「もちろん!!準備OKだぜ!!」
「ちゃんと確認しながら、準備をしました」
「忘れ物も無いよ〜」
私の言葉に対し、そう言葉を返した後、リュックを背負うアレス達。
森の外への憧れで、胸がいっぱいになっているのか......アレス達の顔は、キラキラと輝いていた。
......というか
「みんな、大きくなったね........」
今更だけど、時の流れって早いもんだね。
だってもう、みんな大人の階段を登る一歩手前だからなぁ。
.......不老不死だと分かって以降、時間感覚がおかしくなっちゃったから、こういう時間を大切にしないとね。
「そりゃあ、俺はもう18歳だしな!!」
「あと2年で20歳......てことは、アレス兄さんはまだ子供ってことですかね」
「ハッ!!確かに!!」
クロの言葉に対し、ハッとした顔で、そう言うアレス。
「どちらかと言えば、半分大人じゃない?」
「あ、そっか」
呑気にそう言うアレスを、微笑ましく見守る私。
あぁ.....これが親の気持ちなのね。
一緒に旅するとはいえ、あの頃の可愛かった姿が見れないと思うと、少しだけ寂しいな。
もちろん、今のアレス達も可愛いけどね。
「あぁ〜!!どうせだったら、昔のアレス達の姿を残せる道具を作ればよかった〜!!」
暇を持て余していた時に、カメラ的な道具を作っていれば、アレス達の成長記録を残せたのに.......
「まぁ、それは置いておいて......旅に出るとなると、この家ともお別れかぁ」
何せ、自分で作ったから、余計に思い入れが.....ね?
「そういえば....俺らが赤ちゃんの頃から、この家ってあったよな」
「そりゃあ、アレス達を拾う前に私が作ったからね」
アレスの言葉に対し、自慢げにそう言う私。
「前々から思ってたけど.....この家って、築数百年はありそうですね」
「でも、その割にはボロボロじゃないような?」
フッフッフ.....気づいてしまったか。
「この家はね、数百年持つように保護魔法を掛けたの。だから、今でも綺麗ってわけ」
私がそう言うと、ライラは目を輝かせ
「凄い!!流石はお師匠様!!」
と言った。
「どうりで、この家に結界モドキ的な術式が貼られていたんですね」
「え!?てことは......クロは気づいていたのか!?」
「むしろ、アレス兄さんは気づいてなかったんですね」
アレスに対し、呆れながら、そう言うクロ。
むしろ、その術式が分かるクロも凄いけどね。
「さてと.....それじゃあ、行こうか」
私がそう言うと同時に、家から出る私達。
「なぁなぁ。森の外って、どんな美味しそうな物があるんだろうな?」
「.....昨日もその話をしていましたよね?」
相変わらずなアレスの様子を見ながら、そう呟くクロ。
「お師匠様、これからどこに行くの?」
「とりあえず、人がいるところまで行こうかな?」
アレス達は、今まで森の中でで育った分、人との交流が無かったから、そういう経験をさせておいて、損はないしね。
「それって、街っていうところ?」
「う〜ん.....街かもしれないし、村かもしれないかも?」
「?」
私の言葉を聞き、頭にハテナマークが浮かんだのか、腕を組み、悩み始めるライラ。
うん、可愛い。
「いずれにしても、もう数百年ぐらいは森の外に出ていないから、国の関係性とかが分からないんだよね」
ひょっとしたら、故郷の国が滅んでる可能性もあるしね。
「でもまぁ、それも楽しめばいい話だけどね」
これも時の流れってやつですな。
「そう言い切れるなんて.....師匠は本当にスゲェや!!」
「ですね」
「お師匠様、凄い!!」
.....そ、そこまで褒められることは言ってないんだけどな。
「ではでは、改めまして.......行ってきます!!」
「「「行ってきます!!」」」
長い間、お世話になった我が家に対して、そう言った後......その場を後にして、森の中を歩く私達。
この旅が、私達にどんな結果をもたらすのかは分からない。
だけど......可愛い子には旅をさせろって言うし、これもいい経験になるか。
「バイバイ、私達のマイホーム」
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