最終章「七月七日夜七時」

イントロダクション

『ハッピーバースデー、かっくん。今日で何歳になりましたか?』

『二十五だな。いわゆる結婚適齢期』

『うわ……なんかおっさんくさい反応。あなたは本当に二十五ですかー?』

『事実だろ』

『まあ、そうだけど。あ……でも、もしかしてそういう意味?』

『俺たちも、付き合い始めてもう五年以上経つしな。そろそろ、そういうことを考えてもいい時期だと思うんだ』


 大学二年から交際を始めて、順調にステップアップしてきた二人。

 そんな折にふとわいた、ささやかだけど確かな思いだった。

 それから間もなくして俺と葉子はお互いの親に挨拶を済ませて、晴れて二人は婚約者となったのだ。

 それからの一年間はまさに光陰矢のごとしで、慌しくもあるが、同時に充実した毎日だったのだ。

 だからこそ、葉子の死は俺にとって衝撃で。もう二度と恋なんてしないと、心に誓いさえしたんだ。


 それなのに、俺は彼女と出会ってしまった。


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