海音の使命
泣き疲れて眠ってしまった海音を悲しげに見つめながら苦笑いをもらす。
海音を抱き上げ、海を渡る綿津見。
そこから綿津見と海音の長い旅が始まった。
海音は余程、疲れていたのか丸2日深く眠っていた。
目的地も知らずに無言で綿津見について行く。
目が覚めてからは2週間、必要最低限の会話しかせず2人は過ごしていた。
「はぁー…。」
2週間という長い沈黙を破ったのは綿津見の深いため息だった。
「目的地も聞かないのか?もう2週間は経ってるんだぞ?」
「興味ない。
目的地がどこであれ、僕が殺されるならそれでいい。
お母様の所へ行けるから。」
本当に海音からの言葉なのかと疑うほど冷たい声で言った。
「残念だな母親の所に行けなくて。
俺はお前を殺そうなんて思ってないし、閻魔大王様もお前を殺さない。
言ったろ?お前を助けに…というか迎えに来たって。
お前を死なせたら俺がどうなるか分かったもんじゃないからなぁ!ハハッ!」
綿津見は指で鬼の角を作りながら豪快に笑った。
「僕は生きてても夢幻か悪霊に喰われるか、人間に殺されるだけだ。」
思いつめた顔でうつ向きながら話す。
「殺されないように強くなろうと思わないのか?
お前の夢はどうしたんだ…?
強い不安に心が浸食されるとお前の妖力消えるぞ。」
さっきとは打って変わって海音をまっすぐ見つめ、改まった声で問う。
「どうでもいいよ、王国はもうない…
守るべき人もいない…僕には何もないんだ。」
海音は綿津見を睨みつけるように強く見つめ返す。
「そうか…
じゃあ、俺の話を聞いてから今後を決めてくれないか?
今回の事件、この世界の事、目的地をな。」
綿津見はニカッと笑った。
「はぁ…
いいよ。聞くだけ聞くよ…聞いて欲しそうな顔してるし…」
海音は小さくため息をつき、2人は止めていた足を動かした。
「さすが海音!無気力でも優しさはかろうじて残ってたか!!
まず、俺達が向かっているのは
王国のあった所から大体、2カ月くらいの距離だから結構な長旅だな!
つまり海音…お前は
「
「さぁ…?妖力が強いからじゃないか?理由は知らされないんだよ。
閻魔大王様の決めたことは絶対…こっちも参ってるよ…。
ただ、今回のお前みたく日本各地に
「なんで各地に創るの?綿津見がいるのに…?」
「おいおい!呼び捨てかよ…さんを付けろさんを…
日本全体の海の神は俺だよ。
ただ、日本中の海ってなると1人じゃ全部は見れないだろ?
だから
閻魔大王様が決めた妖や人間を神にする…
山も同様に
村から5日かかる距離の所にもでっかい山があるから、
もしかしたら仲間が出来るかもな!」
「ふーん…そうなんだ。なんで見る必要があるの?
僕が居た王国だって海を守ってたよ…。」
「そうだな。お前の居た王国みたいに仲間を作って暮らしてる妖もいる。
それが良い奴か悪い奴か…強いのか弱いのか…分かんないだろ?
でも強さが約束されてる奴が神になったら悪い妖や人間から…
何かあったら協力し合ってその土地を守ることが出来るだろ?
神になる掟もあるし…だから閻魔大王様が決める必要があるんだ。」
「まぁ…確かに…。」
「目的地とお前の使命は分かったな?
次は神の世界について説明してやる!」
綿津見は生き生きと話続ける。
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