無数の赤黒い雨

「うあ”あッ!!…何故だ…ッ!!」


父の声が聞こえ上を見上げると、腕から大量の血を流していた。

目を擦りながら急いで父の元へ急ぐ海音。



「お父様…!!…僕の妖力でッ!!」


「海音!よせッ!歌の妖力が効かないんだ…何か細工をしているらしい…

さっきは私しか居なかったから…まとめて相手出来たが…

ここで妖力を使ったら他の民達も巻き込んでしまう…!!

しかも、悪霊達がまた騒ぎ出しているようだ…こっちに向かって来る…。」



「そうだ!!僕の力で皆を避難させるから!お父様は力を使ってよ!」



「こんなに大勢の避難はお前には難しい…多くても2、30人といった所か…

残っている民は100人弱…怪我人もいる…

怪我や恐怖心で皆、妖力が弱まっている…クソッ…どうすれば…。」


父は人間の攻撃から身を守りながら必死に考える。


が物凄い勢いでこっちまで飛んでくる気配がした。


「お父様!!危ないッ!!」


そう声を上げた時にはもう遅かった…

父の背中と人間の腹を貫くが見えたー。



「あ”がッ!!」

「ごぼぼっ…!」



その瞬間、父と人間は赤黒い光に包まれ消えていった。


「お父様…!?」


が次々と他の人魚や人間達の腹や頭を貫き光と共に消えていくー。



「皆!?何で…何が起きてるんだ…ッ!!」



「やっと静かになったわね…

これはこれは…人魚の王子様じゃありませんか…

この度は私の部下達がお世話になったようで。」



「お前は…誰だ…!?」


「自己紹介がまだでしたね…私、夢幻むげんと申します。」


「皆はどこだ!お父様はどこにいるんだッ!」


「はぁ…王子様と言ってもまだガキなのね…威勢がいいのは良いことだけど…

皆はね…見ての通り死んだのよ?私の槍に貫かれて…可哀想な事に消えていったの。

でも、私のお陰でこの悲劇を終わらせてあげたのよ?感謝して欲しいくらいだわ。」


「なんだと…!!ふざけるなッ!」


怒りに任せ海音はペンダントを握る



「貴方、自分の立場分かってないみたいね?

この量の悪霊達…この私を貴方みたいなガキ1匹で倒せるとでも思ってるの?

が生まれたって言うから来てみたものの…

まだ育ちきってないし…今喰べたところで…ね?」


「何が言いたい…!」


「今の貴方じゃ力が弱いって事よ。

その年にしては強い方だけど…もう少し大人にならないと喰べ頃じゃないわね。

貴方は成長してもっと妖力を強くしなきゃ…今喰べるのは勿体ないのよ。」



「僕は誰にも喰われたりしない!」



「いいえ…喰べられるわよ…この私に…!!

私はずっとこの時を待ってたのよ?

たくさんの妖怪と人間を喰べても、ちっとも妖力が強くならない…

喰べ過ぎるとお父様に殺されるから、一度に強い妖力を手に入れないといけないの!

大人になった貴方を喰べたら今よりもっと強くなれる…ッ!!

貴方の事は逃がさないから…私以外の妖怪に殺されないようにね?フフッ…」



「殺してやる…ッ!!今ここで…僕のお父様とお母様…皆を返せえええッ!!」


ペンダントから青い光の粒が現れ、海音の手に集まり青緑に光る槍となった。


「あはははッ!お母さんを殺したのは人間でしょ?

あ…違うわね…のかしら…?」


「黙れえええッ!殺す殺す殺すッ!!二度とその口を開けないようにしてやるッ!」


槍強く握りしめ、美しい歌声を静かな海に響かせながら全妖力を集中させる…



「海音おおおおおぉぉッ!!!」


が海音の名を叫びながら、夢幻と海音の間に入り2人は動きを止めたー

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