第3章 ヒューイ、フラグ回収しまくる
第1話 ヒューイ独立作戦の行方はいかに。
まんべんなく、アルバートのパートナー候補たちと交流している俺。アルバートを含む攻略対象キャラたちからの独立作成、成果が出ているかというと。
「……離れられている気がしねぇ」
「俺もできてないと思う」
ため息混じりの言葉に、ユーゴが同意する。俺とユーゴは彼らから逃げるようにしてこそこそと過ごしていた。
ショーンは大丈夫そうだから普段通りに接しているが、なんとなくアルバートとブライアンの組み合わせが危険な気がして避けている。あと、ブライアンとジェスローの組み合わせも避け気味だ。
だってあの二人、特に最近揉めやすいんだもん。
アルバートたちと一緒にいないと、ゲーム本編でのモブたちが群がってくる。命には関わらないけど四面楚歌だ。俺のメンタルが死にそう。
対人MP少ないんだよ、俺。勘弁してくれ。
どちらともなく、はぁーっとため息を吐き出した。さすがのユーゴもちょっと疲れている。彼がいてくれて、とても助かっている。主に俺のメンタルが救われている。
前世からの知り合いがいるって素晴らしい。しかも主人公補正がないっていうから、ヒューユーもユーヒューもない。完全なる安全牌だ。
「なぁ、ユーゴがあの誰かとくっつくのはなしなのか?」
「……子供みたいなもんだぞ。ヒューイの方こそどうなんだよ?」
ユーゴへの質問がそのまま返ってきた。俺はいつもと変わらない考えをすぐに口にする。
「えっ、俺は自分と攻略対象キャラがっていうのは解釈違いだからなぁ……俺は見ていたいタイプなんだ」
「あー……この、根っからの腐男子め」
くたりとテーブルに突っ伏したユーゴに、なんとなく「ごめん」と謝った。
ヒューイ独立作戦惨敗の気配が濃い。それを強く感じている今日この頃。たまたま一人で歩いていたらアルバートに腕を引かれて部屋に連れ込まれた。
やや薄暗い、しかし相手の表情がしっかりと見える明るさを保った室内で俺は壁ドンされた。あー、顔良いなぁ。俺の顔に似てるけど。
まぁ、親戚だしな。血の濃い一族のはとこ関係だから、それなりに造作が似るのは当然だ。
「ずっと、私は考えていた」
「……?」
これ、どういう状況? 俺は伏せ目がちに語り出したアルバートを見つめた。まつ毛、相変わらず長いな。とか、そんなことを考えてのんびりとしていられたのは少しだけだった。
伏せられた目が、こっちに向けられる。群青色に星を散らしたような目が俺を射抜く。
語られ続ける俺へ対するアルバートの気持ちに、俺はどうすれば良いかも分からず、ただ目を見開いてそれを聞き続けていた。
私のはとこは可愛い、という内容がひたすら続くだけのそれは、本当に反応に困る。可愛いつもりとかなかったし、淡々と褒められるでもなしに語られるのは、本当に言葉にしがたい。
これは、もしかして口説かれてるのか? そう気づくと、この状態が何を意味しているのか分かってくる。
ガチ? え、これはアルバート本気?
少し色味の違う俺の顔のパーツが好きとか、純粋で可愛いから好きとか、は、まだましだけど……。もうしばらく逆鱗が目覚めないでほしい、とかちょっと束縛じみたものまで混ざってる。
え、俺に対して独占欲じみた考えとか抱いてたんだ!? びっくりだよ! しかも、その気持ちを育ててはいけないと制御しようとまでしていらっしゃる。おっと、思わず言葉遣いがおかしくなってしまった。
「……と、格好つけていた自分がいたわけなのだが」
「ひゃい……」
たったひと言返事するだけなのに噛んだ。すっげー恥ずかしい。俺が羞恥心に顔を赤くすると、アルバートはゆるく笑んで額を重ねてきた。
うぁ……これは、スチルとかでよくあるやつ……ユーゴとアルバートの組み合わせで見たかった……! 実際される側になると、これは恥ずかしい。本当に恥ずかしい。早く額こっつんやめてほしい。
誰か助けて!!!
誰も助けてくれない。そりゃそうだ。だってここには俺とアルバートしかいない。
「……どうして、ユーゴとそんなに仲良くしているんだい?」
どうしてそんな質問に? ヤキモチ? さっきの独白的なあれの延長? 俺がユーゴとパートナーになるんじゃないかとか、そういう不安を覚えてこの暴走に至ったとか?
そうだとしたら、俺の返事は、だいたい決まってる。
「ユーゴは、友達……だか……ら……」
ちょっと声が揺れたかも。俺の発言が気に食わなかったのか、アルバートは俺にぐりぐりと額を押しつけてくる。ちょっと痛い。赤くなりそう。
「……私は、君の何だ?」
ちりつくような熱い視線にどきりとする。攻略対象キャラの顔面は強い。俺は必死で言葉を絞り出す。
「……はとこ」
「それだけかい?」
うぅ……アルバートが攻勢を弱めてくれない。はとこじゃ満足できない? えっと、友人の上位互換……。
「し、親友」
これでどうだ!? 遼一の解釈が合っていたということを実感しながら、とにかく現状を無事に抜け出すことだけを考える。ええ、マジでブロマンスじゃなくてボーイズなラブの方!?
「私が、今、どういう気持ちで君を見つめているか……分からないのだろう?」
ひぃっ! 俺は今すぐにでもこの囲いから抜け出して、逃げたかった。
「……意味深すぎるぅ!」
「なるほど、ここまですればさすがにそうなるか」
そうなるって何だよ! 勘弁してくれ!
「ひぃ、キラキラするな! 俺とのソレは解釈違いなんだよぉ……!」
俺は! こういうのを! アルユーで見たかったんだよ! アルヒューじゃないんだよ!! ほんっとうに解釈違いだから。俺は見る側でいたいんだから!
息を荒くしていて暑苦しいだろう俺の額に、いまだに自分の額を押しつけているアルバート。こいつが何を考えているのか、俺にはまったく分からない。
でも一つだけ分かることもある。アルバートの口角が上がって見えるから、きっと彼はこの状況をちょっと楽しんでいる。くっそぉ!
「……逆鱗は反応していないが、今一番好きなのはヒューイだよ。覚えておいて」
「ひぇ……」
じっと見つめてくるアルバート。負けていられない、と俺は見つめ返した。にらめっこみたいな状態が少しつづくと、そっと額が離れていった。
……俺の、勝利か? いや、安心するのは早い。さすがに俺も学び始めていた。
「……私は、ヒューイが幸せになれるのならば、どんな立ち位置でも受け入れるよ」
「アル……」
でも、俺は彼にそういう風に思われるほどのことはしていない。そう言うと、アルバートは俺の頬をそっと撫でた。愛おしむような触れ方に、俺は自分が乙女になった気がした。
「君は、このまま幸せに過ごしておくれ。私の願いはそれだけだ」
「……はは、無欲だなぁー」
前々から変わることのないいとこ。だからこそ、俺はお前の親友でいたいんだ。ごめんな。
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