無双転生の躁鬱
@Yoyodyne
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公園のベンチに座り子供を眺めていた。ある子供は水を飲み、ある子供ははしゃぎ、ゲームをしながら節操なしに大声をあげまくし立てていた。
子供たちの行動は全て公式には商標マークがつけられている。笑い声™、追いかけっこ™、仲間はずれ™、罵声™、そして座りもの憂げな目をしてタッチパネルを乱打™する。
石蹴り™、メンコ™、有線通信™、赤外線通信™、すれ違い通信™、WiFi™、初期の頃は技術力が規定する空間に縛り付けられた奴隷であることを否応なしにわからされていた彼らは時代のテクノロジーの症状が進行し人が認知可能な空間の限界を超過するにつれ、拘束されている事実にすら気づく事ができなくなっていった。
高周波を垂れ流す電子機器の隣でナイロン、ポリエステルの縄で構成されたピラミッドをゆさゆさと揺らしている子供が一人。昔、この公園の今と同じベンチで一夜を越した時、その真下で老人がこの遊具を時間をかけながら登り麻縄をかけ、縊死にはあまりにもありきたりでスタンダード(船をボラードに縛り付けるための結び方としても)な方法で首を吊り、もがき、動かなくなり、発見され撤去されるのを見たことがある。
生物、死体、化学繊維の猥雑なサイボーグフランケンシュタインのその生命は短く、やがて死せる蔓と同化し、奇妙な果実となった。
動かなくなった生というイメージを表面に貼り付けた”それ”は最後の生命活動として聖水と黄金を股から垂れ流す。目のやり場に困り手に持ったワンカップの水面に映る自分の分裂した歪んだ姿を見ているとやがてサイレンが鳴り響き、それは担架で運ばれていった。
演じる役割を変え互いに交換しながら、保護者を嘯き、社会の一切のメカニズムもわからないのに優悦に浸り他者に投影した理想の自分を消費しあらゆる自分の振るえる最大限のコード化された暴行を正当化したいがためだけに社会人を詐称し、その実、権威のために必要のない関係を強い、全く成長することのない慣習に頼りきりの愚劣でグロテスクな集団としてしか存在することができない大人を真似てそれを直接的身体的に表現する子供。ポトラッチは相対的に差異としてのみ存在できる。無垢を期待される存在は純粋贈与の儀式を通して絶対的な無垢に徐々に近づいていくが到達できない。
そんな彼らを拉致し”社会人”に売り飛ばすため、優先順位を付け物色していると隣に痩せ型の男が座って来て、何やら独り言(もしかしたら話しかけてきたのかもしれないが)を言いはじめた。
「私は自分の死を見た。
青白い顔の男が四つん這いでうごめきながらものすごい速度でこちらに近づいてきます。
私の眼前ですくっと立ち上がると腕をいきなり前に突き出しました。
胸に衝撃が走り、次に表面から垂直に刃が滑り込み突き抜ける予感がありました。
私はその場に崩れ落ち胸を見ると薄ボケた木製の柄が突き出ている。不思議に痛みは感じず、他人事のように勃起したそれを眺めているとなぜか笑いがこみ上げてきます。
━━━自分から見て左端の木陰にペットボトルを両手で慎重に持ち上げ白濁した中の液体を必死に飲み干す少女が居た。素早く見方を概算して背恰好を脳裏に刻み込む。
━━━しかし、喉に血が溜まり、口からはくぐもった音しか出せなかった。青白い男はじっとその場に立ち尽くし、こちらを見下ろしています。血の気が引き全身に悪寒が走る。身体が小刻みに震え死に段々と向かうことだけがわかります。
徐々に血圧が下がり、それにつれて酸欠のためか私の震えはその時単なる受動的な植物性のものからそれまでの人生で味わったことのないような絶頂の感覚という能動的で動物性のものに反転していきました。確かに私はその快感をコントロールしていたのです。
━━━ペットボトルの中の万物の光、その乱反射した内の一つが真っすぐに我々の方へと投影される。ベンチに座りながら群れから逸れる時をじっと待つ。
無双転生の躁鬱 @Yoyodyne
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