第31話 闇のオークション
「本来なら、将軍クラスが2匹だと、騎士団レベルでの対応になる。だから、あくまでもロクサーヌ姉妹の救出をメインにしていきたい。俺とドミンクで揺動する。ライダーは姉妹の救出を頼む」
「分かった。必ず助け出す」
ライダーは誓いを立てた。
エピカリス王国の至る所で、この国では普段見かけない人物たちが姿を現していた。高級な軍服に身を包み、背後に何人もの家来を従えさせた悪徳貴族。各地で犯罪を起こして、金塊やゴールドを奪って生活している荒くれ者たち。怪しい売買を繰り返す、商人と、その警護を行う戦士たち。地方の国からやってきた雇われのパーティー。
彼ら、彼女らは、ただ一つの目的のために、エピカリス山脈を超えてここまでやってきた。エピカリス宮殿から少し北に行った所にある、闇オークションの会場に向かっているのだ。
それに対して、エピカリス王国の住人たちは、満面の笑みでそれらを迎えていれた。青い粉で洗脳されている住人たちには、もはや闇オークションが犯罪だという区別すらついていなかった。
「レディースorジェントルマン! 今回は闇オークションにお集まりいただいきありがとうございます! あっ闇なので、ここに来ている方は、他言無用でお願いします。では、今回の商品を紹介しますー!」
司会者の人が笑顔でそう言っている。人身売買や魔薬などが売られる闇オークションを開催する側の人にまともな奴などいない。司会者もその一人なのだろうとブレイドは思った。
「なんと! あの伝説的な幻! 白い羽の妖精族です!」
ウオオオオオオ!
盛り上がる会場内。
照明が消えて辺りが暗くなり、舞台の一つの方向にスポットライトが当たった。
そこに照らされていたのは、背中の羽のほとんどがちぎられた妖精が、手足と口を鎖で拘束されて、檻に入れられていた。
「あれがロクサーヌの妹か。随分とひどいな」
ブレイドが言った。ドミンクも隣で頷いた。
闇オークションの説明が行われる。始妖精族の特徴や、なぜ捕まって、どういう風に羽がぼろぼろになったのかが事細かく説明される。
嘘だな。
ブレイドは思った。特に物語の中に魔族という単語が出てこない。それはエピカリスを調べ尽くしたブレイドたちにとってはありえないことだった。
セリが始まった。
悪徳貴族や、荒くれ者たちがこぞって、お金を提示していく。すると商人がさらにその上をいく額を提示した。ある程度時がたったところで手が上がらなくなる。皆お金を出せる額が無くなってきたのだ。
商人が手を挙げる。
「金塊12個だ!」
「おおっと! ついに12個出ました! これよりも多い額を提示できる方は?」
司会者の煽りに、いるわけないと言う顔をする商人。実際に、会場から他に手を挙げる様子がない。
ブレイドはその様子を見て頃合いかと思い、手に持っていた袋を開いた。中には、金塊が20個ほど入っている。これまで魔王軍討伐で報酬としてもらってきたものだ。
スッと手を挙げた。
「いや、まだ居たぞ! はい、一番奥の方、どうぞ!」
司会者に呼ばれたブレイドは立ち上がった。
「金塊20個」
オオオオオオオオオオ!
沸き起こる歓声が会場を包む。
対して金塊12個を提示した商人の顔は真っ青になっていた。
「で、出ました! 金塊20個! これより上の方は?」
観客たちは先ほどの商人の方を向いたが、首を横にブンブン降っていた。どうやら降参らしい。
「き、決まりましたー! では、妖精族は一番後ろの方の手に渡ります! では、こちらは金額を投入してください!」
司会者はそう言って自分の手元にある大きなカゴを指差した。
ブレイドはそのまま歩いてカゴがある正面へと歩いて行った。内心ほっとしていた。金塊20個がブレイド率いる勇者パーティーの全財産である。ロクサーヌが居たら絶対に文句を言ったことだろう。今は、ロクサーヌの妹を助けることができるだけで精一杯だ。少数精鋭といえども、騎士団等の数には劣ってしまう。それは対魔王軍でも同じだった。だからあくまでも勇者パーティーの目的は魔王討伐だ。魔王城に辿り着くまでの将軍レベルの戦いは、依頼内容にも入っていなかった。
ブレイドはカゴに金塊20個全て入れ終えると、囚われの身だったミルは鎖がついた状態で引き渡された。
ブレイドはその鎖を持ってミルを抱きかかえたところで、オークションは終了となった。
「安心しろ。俺はロクサーヌと同じパーティーの職業:勇者のブレイドだ。助けに来た」
「ダメ…これは罠よ。ドクタールたちはあなたたちをどこかで嵌めようとしているはず」
ミルは怯えながら小さな声で言った。
「分かった。ひとまずエピカリス王国から出るつもりだ。後はライダーと合流してな」
ブレイドも周りにいるオークションの人間に聞こえないよう小さな声で答えた。
その頃、ライダーは魔族に変身してオークション会場の舞台裏に侵入していた。案の定ここには羽がぼろぼろの妖精族たちが囚われていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます