第23話 エピカリスへ出発!
「おばあちゃん! その後どこに行ったか分かりますか?」
戦士のライダーは八百屋のおばあちゃんに尋ねた。
「うーん…そうだねぇ、確かカフェに行くとか言ってた気がする」
カフェ…さっき通ったところだ。すでに店が閉まっていたから、聞き込みできなかったのだ。
「カフェの後は? どこか聞いてない?」
「別に…でもあのカフェは商人や旅でやってくるパーティーの間では有名でね。もしかしたら、何かに巻き込まれたのかも…」
「商人やパーティーですか、なるほどありがとうございます!」
「ええっ⁉︎ 今ので何か掴めましたか?」
八百屋のおばあちゃんは驚いた顔をライダーに向けた。
「はい。十分ですね!」
戦士のライダーは、そう答えて、おばあちゃんにグッドポーズをした。
商人が来るということは、その警護をしている者たちもいるはずだ。そして、わざわざ町に売りに来るようなお金のない商人が雇っている警護はお金が欲しい荒くれ者だ。荒くれ者が好きなのは路地裏。ロクサーヌはそこに連れて行かれたのかもしれない。
戦士のライダーもそこに向かってみることにした。
裏路地に着くと、早速喧騒の跡があった。魔術でなければつかないようであろう地面のえぐれかた。ただし、それが随分と昔のように思えた。早くても1年前についた跡だろう。
「おいおい、こんな時間にここになんのようだ⁉︎」
背後から喋りかけられた。気配は三人。実はとっくの前から気づいていたが、情報を得るために泳がせておいたのだ。
そうとも知らずに調子に乗る三人の荒くれ者。
「ははぁ…さては、ここに来て日が浅いな。ここがどういう場所か知らないらしい」
「弱い人間が集う場所だろ? ここは。それより、こんな顔のやつ見なかったか?」
戦士のライダーは自分で書いた、ロクサーヌの似顔絵を見せた。
一人が戦士のライダーに近づいてそれを見る。
「おっ、こいつはカフェで見た女だな。なんだお前も追っていたのか。なら残念だったな」
「どういうことだ?」
「俺たちは見たぜ。この女が人身売買をナワバリとする商人の手下の後を追って行ったのだ。何が目的か知らないが、罠にかけられたたんじゃ今頃おしまいだ。売られるのは確定だな」
「人身売買…この近くの場所は?」
「さぁな。でも最近じゃエピカリス王国でそういうのがやってるて聞いたことがある。そこに行ってみたらどうだ?」
妖精族の国、エピカリス王国。そこはロクサーヌの故郷の町だ。そしてロクサーヌ自身は、人間に変装しているだけで、本来の姿は妖精だ。
ただ連れて行かれただけではないかも知れない。何かある。
「教えてくれてありがとう。じゃあ」
戦士のライダーはそう言って宿に戻ろうとした。
「おいおい、待てよ」
荒くれ三人は突然道を塞いできた。
「こっちが情報を渡したのに、そっちからは何もなしかよ」
「何か見返りが欲しいのか?」
「ふん、情報と引き換えに、お前が身につけている金目の物は全て置いて行け」
荒くれ三人は、戦士のライダーを威嚇した。どうやら3対1なら勝てると思っているようだ。
「悪いがコレが本物だと思っている時点でお前たちに勝ち目はない」
ライダーはそう言って戦士の変装を解除した。上に来ていた鎧や剣。それは全てライダーの魔術によって作り出したものだった。
ライダーは動いた。
その速さに荒くれ三人は反応できない。
「
目の前で手をかざすことで、相手を強制的に眠らせる魔術だ。近づかなければ発動しないという条件付きだが、対複数でも近くにいれば使えるというのが、最高の長所だった。
荒くれ三人は、フラフラ身体を揺らして、ドサリとその場で眠り込んでしまった。
「エピカリス王国。やはり行くしかない」
素のライダーは再び戦士の姿に変装すると、その場を去って行った。
次の日、ブレイド、ドミンク、そして雑貨商人に変装しているライダーの三人は、ツボミ町を旅立った。目指すは、エピカリス王国。そして、その前に立ち塞がる巨大な山脈だ。
「コレを超えるのは、全力で走っても丸一日はかかるな」
ドミンクは麓の道から、山脈を見上げた。薄暗い影が、威圧感をかもしだしていた、頂上付近は、黒い影の上から白いものが覆い被さっていた。雪だ。山脈のどの頂上付近にも雪が見て取れる。
「別のルートはないのか?」
ブレイドが聞いた。
「無い。エピカリス山脈は、エピカリス王国を360度取り囲んでいる。まさに外敵を寄せ付けない天然の要塞だ」
ライダーが情報収集の成果を言った。
「にも関わらず、捕まったロクサーヌは、この山を越えたのか?」
「俺たちでもあるまいし、そんな芸当ができるやつは限られているぞ」
「あるいは突発的な犯行なのかもしれない。どちらにせよ、人身売買が行われる場所に行ってみないと何も分からない」
「じゃあ半日だな。全力を超える全力でこの山脈を超える。もしかしたら、ロクサーヌを捕まえたやつに追いつけるかもしれんしな」
ドミンクは足に魔力を込めた。
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