第14話 オカマの魔族
【ヨザクラ王国近辺・関所通り】
ブレイドは剣を抜いた。
静かに集中力を高める。
目の前には巨大な結界。
この結界が侵入者が張った結界かは分からない。だが、ブレイドは確信していた。
この結界を張っているのはライダーを襲ってきた奴と同じ魔術だ。証拠はあった。
わずかに闇属性の魔術が混じっている。
闇属性は魔王から派生した魔術性質だ。
それが無属性の結界にわずかに混じっているのはおかしい。
特に光属性の人間には特にはっきりと分かった。
「鎮まれ、地に染まり、天に降伏せよ」
剣を横に振った。
「
キーーーン!!
光属性の攻撃と、闇属性が混じった無属性の音感の結界がぶつかる。
音感の結界にヒビが入る。
パリンッ!
軽い音を立てて、音感の結界は崩壊した。
【城内・地下武器庫】
地下から上に上がる階段を登っていたアウリスは突如立ち止まった。
「アウリス様?」
すぐにもう一人の魔族が、その様子を疑問に思い声をかけた。
「……誰かがわたしの結界を破った。気づくことすら並の者にはできないはずだ。イデアが依頼した職業:勇者かもしれない」
「どうしますか?」
「お前はこのまま、わたしとイデアの元に向かう。だが、その前に、魔王軍も祭りに参加してもらう」
そう言ってアウリスは魔力を高めた。
『ロンド聞こえるか?』
【ヨザクラ王国の北東の森】
『は〜い♡』
そう答えたロンドは、500名の魔王軍の魔族と共にいた。
『音感の結界が破られた。勇者パーティーだ。三兄弟が内側から城壁を開ける。お前たちは混乱を起こし、勇者パーティーをやれ』
『了解よ〜♡。アウリスちゃんは?』
『イデア王女を処分して、ヨザクラ王国を乗っ取る。今日の桜祭りが命日だ』
アウリスは力強く言って、
「みんな行くわよ〜♡」
魔王軍の中心でロンドが叫んだ。
「おおおー!」
500名の魔王軍の声が森に響き渡る。関所まで進軍を開始した。
【ヨザクラ王国・ソメイ町】
ブレイド率いる勇者パーティーは、人に囲まれていた。
「うまい! これが3色団子かー!」
ブレイドは思わず唸った。
「ねえねえ、向こうに売ってるリンゴ飴ってやつ買いに行こうよ。リンゴの形なのに中身は飴なんだって! 魔術で作ったのかな?」
「いや、あれは人ので加工されているはずだ。噂にだけ聞いたことはある」
ブレイドは3色団子をもぐもぐと頬張りながら言った。
「ふむ、ここでは茶が飲めるのか」
ドミンクは茶屋と書かれた看板に興味をそそられる。
「ねーお茶いいよね! 3色団子と合いそう」
ロクサーヌも目を輝かせている。
「おやおや、お客さん! 茶屋の前にもう一つ、美味しいようかんはどうですか⁉︎」
「いやいや、こちらのヨザクラうどんは、金賞を取った優れものですよ! 是非お食べください!」
ブレイド率いる勇者パーティーの左右から客引きが自分の商品をアピールした。
「おお…どちらも良さそうだ!」
「だが、流石にあまり食ってばかりじゃいられんぞ」
ドミンクがブレイドに釘を刺す。
「じゃあさ、バラけて食べたい物食べて、城の前で合流っていうのはどう?」
ロクサーヌが提案した。
「いいね。それ。じゃあ、今から自由行動。2時間後に城前集合。それから城の中に入ろう」
ブレイドは二人の意見をまとめて答えた。
「了解!」
「ラジャー!」
こうして、ブレイド、ロクサーヌ、ドミンクはそれぞれ単独行動にでるのであった。
【ヨザクラ王国・城門】
時を同じくして、城門前にいる兵士が倒れていた。
「ウ…なんだ…善魔族じゃ…ないのか…」
うつ伏せに倒れている兵士の一人が首を無理やり動かして、上を向いた。
そこに居たのは、プロトン、デウロン、トレトンの三兄弟だった。
「バーカ。あんなにたくさんの善魔族がいるわけないだろ。魔族のほとんどは魔王様の配下なんだよ」
プロトンが手を腰に当てて、見下すように言った。
「まだ生きてたのか。とどめ刺す?」
トレトンがプロトンに聞いた。
「いや、先に目的を達成したからだ」
プロトンはそう言って、兵士から奪った輪のついた鍵をくるくると指で回した。
そして、巨大な城門の鍵穴に鍵を差し込む。ゆっくりと回して、ガチャリと音が鳴った。
巨大な城門は鍵が外れると自動的に開く仕組みになっていた。
城門の外には500名の魔王軍が待ち構えていた。
「あら、三兄弟じゃな〜い♡。ありがとうね♡」
先頭にいるロンドがオカマ口長でねぎらった。
「ロンド副隊長。作戦開始ですね」
「そうね♡。お世話になったヨザクラ王国をいっぱい痛ぶって上げないとね♡」
ヨザクラオカマバーのオーナーであった時の思い出が頭をよぎるロンド。だが、首を振ってそれの思考を追い出した。
「サー暴れるよ♡」
オーナーから魔王軍副隊長へ、彼は今まさに変貌した。
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