第11話 王女とスパイの出会い
素のライダーは裏路地の一つ目の角を曲がろうとした。その時、ちょうど角の先から、人が飛び出してきた。ライダーは反射神経でぶつかるのを回避した。
「おっと、すみません」
ライダーは深く被ったフードを下げて誤った。
「ちょっと待ってください!」
呼び止められた。
「なんですか?」
ライダーは立ち止まったものの、振り向かずに聞いた。
「あなた職業:勇者ですよね! 分かります。わたくし、こう見えても元女剣士だったので!」
ああ…たまにいるレアな職業目当ての女か。ある程度の鍛錬を積めば誰でも見れる。
「すみませんが、急いでいるので」
「まだ話の途中ですよ! わたくしはイデア。この国の王女です! 現在この国には侵入者がいて、それを見つけれるであろう職業:スパイを探していたのです!」
し…侵入者かぁ。
「誰のことだろうなぁ。でも、俺は旅の途中なので、失礼します」
ライダーは今更、王女に見られたのが恥ずかしくてなって、顔を見せずに立ち去ろうとした。
「へー、いい顔してるジャン」
イデアは先回りしてライダーの顔をまじまじと覗き込んだ。
「うっ…」
「決まり、あんた今日から私の配下ね!」
「いや、意味わからん」
「王女命令よ。ヨザクラ王国のために働いて!」
「そんなの、い…」
嫌だ、と言おうとした。だが、それよりも早く、身体が動いた。
「
遠方から風の弾丸がこちらに向かってくる。
「
ライダーはしゃがみ込むと、巨大な半球状のバリアを出現させた。それで
「えっ…! なに⁉︎」
「逃げますよ」
イデアの腕をとった。ライダーはイデア引っ張るようにして走り出した。
「ちょっと〜わたくしは女剣士なので、自分で走れます!」
しばらく走った後、イデアはそう言ってライダーの手を振り解いた。そしてライダーの前を走る。
「職業:スパイさん、着いてきてください」
イデアは裏路地の角を曲がった。そこは行き止まりだ。イデアはその壁を押した。壁はカモフラージュだった。奥に下にいく階段が続いていた。
「ここを通ったら逃げきれます!」
イデアはそう言って案内してくれた。
湿った空気が奥のほうから流れ込んでくる。2、3メートル感覚で照明がつかられており、ライダーとイデアを照らしていた。足元を流れる川は、意外と透き通っていて、川底が見える。ここは地下通路のようだった。
「この場所を知ってるのは、わたくしと、あとは掃除のおばちゃんだけ。見つかるわけないわ」
イデアは自信ありげに言って振り向いた。
優しいの笑みに思わず、気持ちを持っていかれそうになる。だが、お陰で、首にかけている小さなダイヤペンダントに気づいた。
「そのペンダント、どうやら王女というのは本当らしいな」
「まさか、信じて無かったの?」
「追ってから逃げてる人に、自分から王女なんで着いてきてなんていう人はまずいない」
「じゃあなんで、わたくしに着いてきたのよ」
「情報収集のためだ」
「………? まぁいいわ。わたくしは職業:スパイが欲しいの。だから、あなたは国家権力で強制的にわたくしの専属スパイよ」
「…イデア、俺はすでにブレイド率いる勇者パーティーの専属スパイなんだ。悪いけど、ここに止まることだけはできない」
「なによ。勇者パーティーなんて山ほどあるじゃない」
イデアは少し拗ねたように言った。
勇者パーティーなんて山ほどいる…か。
「確かにそうだ。でも、それでも、俺はブレイドじゃなきゃダメなんだ」
「…なによそれ。理由でもあるの?」
「俺は幼い頃、ボロボロで死にかけの中、荒野を彷徨っていた。なぜそこ居たのかは分からない。でも、どうやって助かったかは今でもはっきり思い返せる。荒野を調査中だったハリヴァル騎士団にいた頃のブレイドに助けてもらったんだ。病院に運ばれた俺は重症だったが、助かった。あの時、ブレイドが助けなければ、俺はとっく死んでいた。そんなブレイドの夢が魔王を倒すことだ。だから、俺もそうした。ブレイドの夢は俺の夢だからだ」
「…じゃあダメか」
イデアは落ち込んだ。
「今がダメなだけだ。ブレイドが夢を叶えたら、俺の夢も叶ったことになる。そのあとはどうなってもいい。イデアの専属スパイでもいい」
「でも、魔王を倒すのなんていつになるか分からないじゃん。侵入者がいるのは今なんだよなぁ」
侵入者。てっきりライダーは自分のことだと思っていた。だが、イデアの今までの言動から職業:スパイが追うべき相手が侵入者ということである。
今の状況とは真反対だ。
ブレイドの連絡通り、この国には何かある。
そしてイデアはどうやら面白いキーマンになってくれそうだ。ライダーの職業:スパイとしての勘がそう言っている。
地下通路の先に、上に登る階段がある。イデアとライダーはそこを上り、マンホールを開けた。
外は高級なシャンデリアを飾っている通路だった。
「ここから城の中に入れるのか」
ライダーは感心した。
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