姉
三月十二日 晴れ
今日、ずっと空き家だった隣の家に宮内さんという家族が引っ越してきた。
お菓子を持ってきてくれたけど、なんと、お母さんの手作りなんだって。すごい!
一緒にあいさつに来てくれたナツキちゃんって子が私と同い年で(ナツキちゃんの名前の漢字聞き忘れたから、今度教えてもらわなきゃ)、なんとなんと、四月から同じ中学校に行くんだって!
ちょっとおとなしそうな子だったけど、仲良くなれるといいな。
三月十六日 くもり
私の部屋の真向いの部屋が、ナツキちゃんの部屋に決まったみたい!
窓を開けて「よろしくね」って言ったら、「めちゃくちゃ近いね」って、ちょっとびっくりしてた。
入学式の次の日、一緒に登校する約束をしたからすごく楽しみ!
四月八日 晴れ
今日は、初めて菜月ちゃんと一緒に登校した!
菜月ちゃんの名前の漢字も聞けたし、たくさん話せてよかったー。
明日も一緒に行っていいか聞いたら、「いいよ」って言ってくれた。毎日一緒に登校できるといいな。
菜月ちゃんとは同じクラスになれなくて残念。だけどもっと仲良くなりたいし、今度、うちに遊びに来てもらおう。
四月二十五日 雨
今日は日曜だし、菜月ちゃんを誘って遊びに行こかと思ったけど、天気わる!
だからうちに遊びに来ない? って窓越しに聞いてみたら、来てくれるって! (菜月ちゃんはスマホを持ってないから、すぐに話したいときちょっと不便)
おやつがなくてお母さんに言ったら、まつたけの里を買ってきてくれた。(私はつくしの山派なんだけどな……)
菜月ちゃんはどっちが好きか聞いたら、「どっちも食べたことない」って言われてびっくり!
チョコ嫌いなのかと思ったけどそういうわけじゃなくて、菜月ちゃんちはお店で買ったお菓子は食べないんだって。ごはんもお菓子も、全部お母さんが手作りしたものしか食べたことないんだって。
「すごいお母さんだね、羨ましい」って言ったら、「麻衣ちゃんちのほうが羨ましい」って言われちゃった。
うちのお母さんはお菓子なんて、たまーにクッキーくらいしか作らないのに。
五月十日 晴れ
最近ちょっと、同じクラスの笹本くんが気になる。別にイケメンってわけじゃないけど(どっちかといえばかわいい系?)、頼りがいがある感じだし、すっごく優しい。
でも誰にでも優しいのかな? やだなあ……私だけに優しくしてくれないかなって思ってみたり。
恋か? 恋なのか? うわあああ!
五月二十四日 くもり
部屋で漫画を読んでたら、菜月ちゃんに話しかけられた。
「何読んでるの」って聞かれたから、表紙を見せてあげた。(タイトルは恥ずかしいから言えない! 書けない!)
菜月ちゃんは、漫画も読んだことがないんだって。中学生女子で漫画を読んだことがないって、天然記念物じゃない?
菜月ちゃんも読んでみたいって言ったから、貸してあげようと窓から渡そうとしたら手が滑った。うちと菜月ちゃんちの壁の隙間に落ちちゃって、とれなくなっちゃった。
お母さんが物干し竿を使ってとってくれたけど、気をつけなさいって怒られた。
反省……はするけど、そもそも隣の家と近すぎじゃない?
六月六日 雨
朝から雨で、せっかくアイロンで伸ばしたのに髪大爆発で最悪! でも今日はめちゃいいことがあったから許すことにする。
なんとなんと、笹本くんの連絡先ゲット! やったー! 思い切って聞いてみて本当よかった!
でも勇気がないからなかなか自分から連絡は難しいなあ……。世の中の女の子たちはどうしてるんだろう。
菜月ちゃんに相談してみようかなあ。
あーもう! 亜衣がまたずっと電話してる! 声大きすぎ! うるさすぎ! ちょっとくらい喜びの余韻に浸りたいんだから静かにしてよ。
六月二十一日 雨
今日、思い切って菜月ちゃんに笹本くんのことを相談してみた。(恥ずかしいから笹本くんのことだとは言わなかったけど……)
「好きな人に連絡したいときってどうしたらいいのかな」って聞いてみたら、なんと菜月ちゃんにも好きな人がいることが判明! 誰だろう誰だろう。誰かは教えてくれなかったけど、楽しそうだった。
菜月ちゃんは「私は好きな人の連絡先を知らないからなんてアドバイスすればいいか分からない」って言ってた。教えてもらえばいいのにって思うけど、難しいよね。私もすごく緊張したし、断られたらどうしようって怖かったから、分かる。
でも菜月ちゃんはいろいろ考えてくれて、「来月のお祭りに、一緒に行こうって誘ってみたらいいんじゃない」って提案してくれた。菜月ちゃん、優しいなあ。
断られたらって思うとやっぱり怖いけど、勇気を出して誘ってみよう!
菜月ちゃんも、「私も頑張って誘ってみようかな」って言ってたし、うまくいくといいなあ。
もし、菜月ちゃんも私も好きな人と一緒にお祭りに行けるなら、ダブルデートとかいいかも! 気が早いかな?
七月一日 晴れ
お祭り、もうすぐなのにまだ笹本くんを誘えてない……。どうしようどうしようどうしよう。
そろそろ中間テストだしって思って、誘わない言い訳を考えちゃっててダメだよね。勇気がないだけなのに。
もう一緒に行く人決まっちゃってたりしないかな。まだ大丈夫かな。
ていうか、笹本くんって好きな人いるのかな? もしかしてすでに彼女がいたりして? ああもう! 考えても仕方がなしさっさと誘っちゃおう!
決めた、今から誘う! メール送ってみる! もう当たって砕けろ精神だ!
そういえば菜月ちゃんは、好きな人を誘えたのかなあ。
七月二日 くもり
昨日はテンション上がりまくりで、嬉しすぎて、日記も最後まで書けなかった。
勇気を振り絞って笹本くんにメールを送って、なんとなんとなんと、お祭りに一緒に行けることになりました! やったー!
なんでオッケーしてくれたのか分からないけど、勇気出して誘ってみて本当によかった。もう楽しみで仕方がないよう。
あ、でも去年買った浴衣、どんな柄だったっけ。変な柄ではなかったはずだからそれを着て行こうかな。
メイクもしたいから雑誌とか買ってお勉強しなくちゃ。メイク道具も揃えなきゃだけどお金足りるかなあ。百均のじゃ安っぽい?
せっかく好きな人とお祭りに行けるんだから、やっぱり完璧な自分にして行きたいな。浴衣用のヘアアレンジとか分かんないから、それはお母さんにやってもらおうかな。
よーし! 頑張るぞ!
七月二十三日 晴れ
いよいよ明日、笹本くんとお祭りだ。……どうしよう緊張してきた。すっごく楽しみだけど、ちょっと怖い。変なこと喋ったりして、嫌われちゃわないように気を付けないと。
でもせっかく一緒に行けることになったんだし、楽しみたいな。
菜月ちゃんも好きな人をお祭りに誘ったみたいだけど、断られてしまったみたい。
「ダメ元で誘ったんだし平気だよ」って笑ってたけど、大丈夫かな。そういえば、目が少し赤くなってる日があったけど、もしかしたら泣いてたのかもしれない。
こんなに近くに菜月ちゃんがいるのに、全然気が付いてあげられなかった。
菜月ちゃんも、好きな人とうまくいくといいのに。って、私もこのままうまくいくと決まった訳じゃないんだから、浮かれすぎないようにしないと!
明日に備えて、もう寝よう。
もう! 亜衣がまた電話してる!
七月二十四日 晴れ
何から書けばいいかな。
もう、幸せすぎて手が震えちゃってボールペンもまともに持てない! あとで落ち着いてからちゃんと書こうかな?
あ、そうだ。お祭りに誘ってみることを提案してくれた天使様、菜月ちゃんにも報告しなきゃ!
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