隠されたキオク その1

 大人になると毎日同じような日々を過ごしていた。

ある日、習い事の先生のお誕生日パーティーにお呼ばれした。

その帰り道、先生のマンションの駐車場で一匹の仔猫を見つけた。

おぼつかない足で駐車場を歩いている。

真っ白で少し長めの毛並み。目は両目とも綺麗なブルーをしていた。


血統書でもありそうな猫なのに…。どうしてこんな場所にいるんだろう?

と思って見ていた。

「この間から猫の鳴き声がするのよね。」先生の奥様が言った。


捨て猫? 迷子?


一目見て可愛い!と思ったたけど、親が許してくれないだろうと思って

諦めようと思った時だった。


その猫は側溝の溝に後ろ足を取られ、前足で空をかいてバタバタしていた。

猫といえば俊敏な動きをするものだと思っていたのに

その猫はあまりにどんくさかった。


「もう、そんなんじゃ野良で生きていけないね!うちにおいで!」


気づいたらその猫を抱き上げていた。

その猫を連れて先生のお宅にお邪魔して、勢いで連れて来たものの

親の反対があるかもしれないなど、色々考えていた。


先生のお宅に入れて貰った後、私がいる場所とは別のソファーで

一緒にいた先生や教室の生徒さん達ら囲まれて可愛がられていた。


だがその瞬間、その猫は背を伸ばして周囲をキョロキョロして

私を見つけて「ニャー!」と鳴いた。

それ見た先生は「行く場所は決まったね!」と言った。


帰り際、先生から意味深な話をされた。

「この子は本当に真っ白だね。真っ白は天からの授かり物だよ。野生では色々な色を持っているけど、浄化して白、天使に近づく個体もあるらしいよ。」

その時は何よく分からないままだった。


そして、その猫はうちの飼い猫になった。

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