ホシイちゃんの記憶

サクラ堂本舗 いまい あり

昔のキオク

まだ小学生くらいの頃からかな、近所のお寺によく行っていた。

お寺に興味があったわけじゃないんだよ。

そのお寺にいるたくさんの鳩に餌をあげることが楽しかったんだ。

お友達が少ない私にとって餌を持っているだけで

近づいてくれる鳩の存在が癒しだったの。


だんだんと大きくなってお寺に行く回数は減ったけど

月に一度位は餌をあげに行ってました。

そのお寺の鳩は灰色の鳩が多かったんだけど、

中学生になった頃、白地に茶色のブチが数個だけある鳩を見つけた。


周囲の鳩から離れ気味で遠慮がち。

他の鳩と違っていることでハブられてる?

気になって見るとはなしにその鳩の様子を見てた。


その時だった。

その白っぽい鳩が私の手に乗って手のひらから餌を食べた。

いくら人に慣れてるからって、いきなり手に乗って食べるなんて

これまで無かったので驚いた。


でも、その鳩が私の手に乗ってまで餌を食べるには理由があった。

餌が落ちてくるのを待ってたら他の鳩に取られてしまうからだ。

やっぱり他の鳩からハブられてるのか、いじめられてる気がした。


それが最初の出会い。

その次からは行くと必ず私の手に乗って餌を食べにきた。

とにかくよく食べる鳩なので私は「ホシイちゃん」と名付けて

毎回その鳩と会えることを楽しみにしてた。


そして月日が流れ、お寺に行くことも鳩に餌をあげることも

すっかれり忘れて日々に忙殺される様になっていった。

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