1-3・作文とは

国語の授業で、作文を書く時間になった。

テーマは「出かけた場所」。


作文とは、「作る」に「文章の文」で作文た。文を作るのだ。

僕は、この前、川で流した笹舟が、石にぶつかりながら川の方へ流れていくのを、走りながら追いかけたことを思い出した。

あの笹舟が、あの川の遠くまで流れていったら、その先は海だ。

海まで追いかけられたら、どんなに楽しいだろう。

あ、でも、途中で何かにひっかかって、止まってしまうかもしれない。

僕の頭の中で、チョロチョロとした川のせせらぎが聞こえ出し、笹舟が静かに動き出した。


僕は先生から原稿用紙を4枚ももらい、中休みも昼休みも5分休みも、ひたすら机に向かって、笹舟が海まで旅に出るストーリーを書き上げた。


夕方、居間にいると、先生からお母さんに電話がかかってきていた。

お母さんはなぜか先生にすみませんと言っている。そして、電話を切ると、困った顔で僕に言った。

「夕樹、学校の作文てね、そういうのじゃないんだよ。」


笹舟のストーリーは、先生にもお母さんにも褒めてもらえなかった。

"そういうの"って、どういうのなんだろう。



なんだよ。みんなして。面白いのに。




---------------------------------------------------




「表現の自由」はどこまで許容されるのか。


小説を書いている身としては、書くことは想像を広げることであってほしい。




作者




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る