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「……なぁ、防犯カメラの設置場所とか知ってるのか?」
「ああ。全て熟知している」
「凄いな。わたしなんて産まれた時からここにいるけど分からないぞ」
「魔法使いだからな」
わたしはそれから、自分の部屋の窓から身を乗り出して魔法使いの後をそのまま着いて行く。
誰にも見付からないように移動するには、今まで歩いたことのない場所を歩いていた。
わたしはただ魔法使いの後に着いて行っているだけだけど、まるで猫にでもなったような気分だった。
「貴様は元から運動神経が良いんだな」
「え?」
「オレは歩き慣れているが、普通なら命綱なしでこんな場所を初めて歩いていたら、地上からの高さ故に恐怖で足が震えるかバランスを崩して地面へ落下するだろう。しかも、その裾の長さと靴で歩きにくくないのか」
魔法使いが振り返り、わたしの足元を見て怪訝そうな顔をした。
わたしの履いているものはそんなに高さはないけど、危険な場所を歩くには不適な女物のハイヒールだった。
そして、拝借したラシャドのズボンは当然ながらわたしの足よりも長くハイヒールが隠れていた。
下手すればハイヒールにズボンの裾が引っ掛かっていつ転んでもおかしくなった。
急いでいたから、ズボンの裾を自分の足に合わせて折るのを忘れていた。
「そう言われればそうだな。事故に遭って歩けなくなるまで、わたしは活発に走り回るのが大好きだったから。それに……ここから逃げれば、これから先これよりも様々な困難がわたしに待ち受けている。そう思えばこんな所で立ち往生している時間はないし、何を履いても色んな場所を歩けるようにならないといけない。実際、今は案内してくれているお前がいるから危険な場所でも安心して着いて来ているだけだけどさ……」
「そうか」
「―――最後にここを通れば、貴様はここから出られる」
「ここって……」
話しながらも魔法使いだけを見て移動していると、いつの間にか地上に足が着いていて魔法使いが立ち止まって指を差した。
「懐かしいだろう? 貴様がよく想い人と街へ遊びに行くのに使っていた抜け道だ」
「……っ」
そう、ここはわたしが事故で下半身不随になる前にラシャドが見付けてわたしたちが街へ行くのに使っていた抜け道だった。
わたしが車椅子生活になってからは行けなくて、いつしか何処にあるのか場所が記憶から薄れていってたけど光景は覚えていた。
「どうしてお前が……ここを……」
「魔法使いだからな」
「それ、お前の口癖なのか? ……まぁ、いいや。この抜け道から出て、街の通行人に溶け込めばわたしは自由の身だ」
「そうだな」
「じゃあ、わたしは行くよ」
「ちょっと待て」
「何?」
わたしが抜け道に足を踏み出そうとすると、魔法使いに止められた。
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