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「条件を飲むのか?」
「飲むさ。結婚式は明後日だが、明日にはもうわたしはカンワストン国にいる。わたしは何が何でもここから逃げたい。
国の王だろうが王子だろうが、想っていない相手と結婚なんかしたくない」
「……そうか」
「取引しよう。何処が良い?」
「そうだな、強いて言うなら……」
魔法使いがわたしのある所に指を差す。
それは、
「……目か?」
「ああ。金色の瞳を持った人間など見たことない」
「そうだな。これはジョヴィル国の王族を血を濃く引いている証だ。王族の血を引く以外ではまずいない」
「ならば、その貴重な目を頂こう」
「良いよ。どっちにする?」
正直、心臓とか脳みそとか言われたらどうしようと思ったが片目なら……。
「何を言っている? 両目だ」
「はっ? それは困る」
「何処でも良いと言ったではないか」
「……お前は馬鹿か? 本当に足が歩けるようになっても、盲目になったら意味がないだろう」
「そういうものか?」
「当たり前だろう!」
……この魔法使い、肝心な所が抜けてるな。
「ならば、もう一つは何処にする?」
「もう一つ?」
「片足に対して一つ代価を払うことになる」
「そういう大事なことは先に言ってくれ」
片目で片足が歩けるようになって……。
あともう1つは何処が良い……?
わたしは魔法使いを見る。
「貴様が決めろ」
魔法使いに決めてもらおうと思ったが、断られてしまった。
急に言われてもな……。
失っても、身体に支障が起きない身体の一部……。
二つあるもの?
耳と手は無理だ。
内部にある二つある臓器もなるべく失いたくない。
5本ある指も……無理だな。
「う~ん……」
わたしは首を傾げて悩んだ。
「……あっ!」
その時、視界にあるパーツが目に入る。
「なぁ、魔法使い」
「何だ」
「これ見てどう思う?」
わたしはそれを掴んで魔法使いに見せた。
「は?」
「どう思う?」
「どうって……普通に美しいな」
「ありがとう。わたしの自慢なんだ、これ」
「……おい。今は自慢をする時では……」
「これって代価になる?」
「は……?」
わたしが魔法使いに見せたもの。
「髪だって身体の一部だろ? 髪は論外か?」
わたしは魔法使いに問い掛けた。
「いや、大丈夫だが……」
「なら、もう一つの代価はこの髪で頼む」
「……良いのか」
「何が?」
「今、髪は貴様の自慢だと言っただろ? それに、髪は女の生命っていうではないか」
「確かにそうだけどさ。でも、ここから出たらこの髪を満足に手入れ出来ないだろうし。この国から逃げてる途中で、きっと邪魔になって切り落として捨てる。それなら、足の代価として差し出した方が良い」
「しかし……」
「何だ?」
「願掛けなんだろ?」
「………」
「貴様は、その髪を伸ばして10年間願掛けしてたじゃないか」
……本当に、何でも知っている魔法使いだこと。
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