【急募】美少女になってしまった親友に、オトされないための方法~親友の無自覚な誘惑に、俺は陥落寸前です!!~
第6話 いいかお前ら、面倒ごとは起こすな。だが面倒ごとに巻き込まれたなら隠さず俺に言え、仕方ねぇから助けてやる
第6話 いいかお前ら、面倒ごとは起こすな。だが面倒ごとに巻き込まれたなら隠さず俺に言え、仕方ねぇから助けてやる
自分たちの教室についてガラッと扉を開けると、周りが一瞬だけこっちを向いてすぐに自分たちの会話に戻る。
そりゃ俺みたいな陰キャが入って来たところで彩人と違って注目されることは無いだろう……そう、彩人と違って。
「お、おいあれ……」
「わ、すっごい綺麗~! 外国人かな?」
「マジ!? あの子、俺と同じクラス!?」
彩人が後から入ってきた瞬間に騒然となる教室。彩人は自身の顔と俺の背中の距離を縮めて周りを見ないようにしている。
俺は出来るだけ彩人と近い席になれれば良いなぁと教室を見渡し、丁度後ろの方に二人分横に空席がある場所を見つけた。
「お、彩人。あそこ空いてるぞ」
「……ほんとだ。てっちん早く確保しようぜ」
「了解っ」
素早く俺たちはその席に向かい、持ってきていたカバンを置く。はい俺たちの席ー……って、それは子供っぽいか。
廊下側に近い方の席を彩人が取り、すぐに机を近づけては俺の方に顔を向けて周りを見ないようにする。
「てっちん、入学式が終わったあとどうする?」
「親父たちに写真撮ろうぜって言われてるからなぁ~、それに付き合わないと」
「あ、オレもだったわ。母ちゃんに『折角なんだから~』って言われてたの忘れてた」
「どうせ今日は昼前には終わるだろうし、終わってから考えても良いんじゃね?」
それもそうだな、と彩人は笑った……こうしてみると、本当にただの可愛い女の子にしか見えないな。
俺はその笑顔から元の彩人の面影を見ることが出来るのでまだ大丈夫だが、今日が初対面の人たちや俺ほど親しくなかった人たちには全くの別人にしか思えないだろう。
「ん? どうした?」
「いや……彩人の笑った顔、昔っから変わんねぇなってさ」
「んだよてっちん、そんないきなり……惚れたか?」
「今のお前が言ったら洒落にならん」
俺がニシシ~といたずらっぽく笑う彩人の背後にチラッと目をやってみると、こちらの方をずっと
「ほんと、洒落にならん……」
早く入学式の時間にならねぇかなぁ~と俺は針のむしろに座る思いで、時が経つのを彩人と雑談しながら過ごす。
しばらくすると案内役の先生がやってきて、俺たちは体育館へと連れていかれるのであった。
「校庭には満開の桜が咲き、美しい草花がうららかな春の日差しに映えております
校長が登壇して式辞を述べ始める。エジソンがどうたら言っているが長いし興味ないしで既に眠い……彩人は50音順で一番前の列だったせいで、来賓や先生にじろじろ見られて緊張で肩が張っているのが後ろからでも分かる。
そういう俺もこっくりこっくり船を漕ぐわけにもいかない。オカンたち、最前列陣取ってビデオカメラ構えてやがった……俺の後頭部をただ撮るだけで何が嬉しいのか?
(校長の話が長いのはどこも同じなのか……小鐘もいたから下手に目立てば怒るだろうし、我慢するしかないよなぁ)
それからというものの、
内容はほとんど覚えていない、陰キャ特有の『急にテロリストが学校に乗り込んできたらどう対処するか?』という妄想にふけることで乗り切った俺は、いつの間にか終わって周りが拍手しているのに気が付いて慌てて追随する。
「次は、来賓祝辞です――」
拍手が鳴りやんだ体育館に、司会進行の先生のマイクに乗った声が響く。俺はこっそりため息をついて、すでに退屈な入学式が後どれぐらいで終わるかを体育館の上の方に取り付けられていた時計を見ながら入学式を過ごすのだった。
◇◆◇
「以上を持ちまして、
お、終わった……長い、それはもう長い戦いだった。テロリストも眠気も何回撃退したか分からない。
担任の先生に連れられて体育館を退場し、朝に入った自分たちの教室に戻る。オカン、こっちを目線で追いかけながら手を振るの恥ずいからやめてくれ……
「おーう、全員揃ってんな。 席ねぇとかで困ってる奴いねぇか? いたら隠すなよ。めんどくせぇことになるからな、俺が」
教壇に上がり、すごいダルそうにしながら俺たちを見てくる担任。スーツをピシッと着ているが、猫背な上に眼鏡の奥に見える濃い
「とりあえずこの後、他の先生の案内で保護者の人が来るから身なりと姿勢は正しとけ。そこ、ぺちゃくちゃ喋んな。ただでさえ退屈でロングなHRが、さらにロングになるぞ?」
「…………」
「よし、グダグダな姿を親に見られたくなきゃ今日は俺の言うこと聞いとけ……自己紹介といこう」
くるっと黒板に振り返った先生は、俺たち生徒に背を向けながらチョークで自分の名前を書き始めた。
カランっと投げやりにチョークを置き場に置いた先生は、みんなに書いた名前を見せるように少しずれる。
「
――ぱちぱちぱちぱち……
「要らん要らん、拍手は入学式で飽きるほどやったろ。保護者が来たときにお前らの自己紹介をしてもらうから、代わりにここにいる全員分に手を叩けるようにしとけ」
まばらに起きる拍手に、めんどくさそうに手で顔を覆ってはそれを止める古堅先生。めんどくさいことが本当に嫌いな先生なんだなぁ……と、教卓に置かれたリストを眺めながら頭をかいている先生に、俺と彩人はお互いに顔を見合わせて苦笑いを浮かべるのだった。
「あー……っと、『激励の言葉』? ッチ、めんどくせぇな。いいかお前ら、面倒ごとは起こすな。だが面倒ごとに巻き込まれたなら隠さず俺に言え、仕方ねぇから助けてやる」
「…………」
「担任ってのはそういう役割の先生だ、学校生活で悩んでることとか困ってることがあれば遠慮なく言ってこい。つか言え、隠されて不登校に発展したら俺の責任問題になるからな」
そう締めくくった古堅先生。そんなぶっちゃけたことを新入生相手に言っていいのか?と俺たちは呆れた目を向けながらも、なんだかんだこの先生なら信頼できると不思議と笑みがこぼれる。
他の生徒たちもそう思ったのか、先ほどとは打って変わってみんなから惜しみない賞賛の拍手が上がった。
「要らねぇっつってんのに……まったく、これだからガキは……」
古堅先生が再び手で顔を覆ってため息を吐く――案外あれは、先生なりの照れ隠しなのかもしれない。
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