【急募】美少女になってしまった親友に、オトされないための方法~親友の無自覚な誘惑に、俺は陥落寸前です!!~
第5話 えぇい引っ付いてくるな、背中から良い匂いするわ柔らかい感触が当たってるわで脳がバグる!
第5話 えぇい引っ付いてくるな、背中から良い匂いするわ柔らかい感触が当たってるわで脳がバグる!
無言ですたすたと二人で歩いていると、『入学式』という大きな立て看板と共に高校の校門が見えてくる。
赤と白の二色で彩られた装飾と、スーツを着た親御さんたちが俺たちと同じ制服を着た奴と一緒に看板前で写真を撮っている光景を見ていると、否が応でも今日が入学式であることを意識させられた。
「新入生の方は、先生の案内に従ってくださーい!」
「入学式は9時から体育館の方で行いますので保護者の方はそちらで待機を――」
学校関係者――というか先生たちが拡声器を片手に呼びかけを行っている。校舎の方へ新入生たちが流れているっぽいな……すでにクラスは決められている感じか。
「俺たちも行こうぜ、彩人」
「そ、そうだな……」
「一緒のクラスになれるといいな」
「え?」
きょとんとした顔で俺の方を見る彩人。ほら、だってさ――
「そっちの方が、おもしろそうじゃん」
「――っ、そうだなてっちん。でもこういう時って『何があっても助けてやれるから』とかじゃね普通? 女の子ってそういうのにドキッとするもんだろ」
「……言ってほしいのか?」
「爆笑していいのなら」
じゃあ言わねー。俺たちは『入学式』の看板にひしめき合っている人たちを何とか避け、受付の方に向かう。
「ご入学おめでとうございます。あら……伊達彩人くん?」
「オレ――自分のこと、知ってるんすか?」
「えぇ、『アルビノで髪が白い子が入学する』と事前通達があったのよ。うちの学校は『派手な色の
「おぉ、良かったな彩人!」
俺は彩人の方を向いて笑うと、彩人もほっとしたように笑みを浮かべた。中学の入学時はすごい揉めたからなぁ……
「それで、君は?」
「あ、天童哲俊です」
「天童くんね……あ、君たち運がいいね。同じクラスだよ」
「マジ!? やったなてっちん!」
あぁ、マジで彩人と同じ教室とは運がいい!俺たちが一緒のクラスにはしゃいでいると、『あ、その前に確認なんだけど~』と受付の先生に水を差される。
「そのぉ……言いづらいんだけど、天童くん」
「……? はい」
「伊達くんって、男……だよね?」
「あー、十日前までは」
俺が正直に答えると、ますます疑問が深まったのか首を捻る先生。『十日前までは……?』と俺の言葉を繰り返している先生に、俺と彩人で簡単に説明することにした。
「朝起きたら女になってて」
「医者に診てもらったらしいんすけど、病気とかじゃなくて普通に『健康的な女性』って診断されて」
「オレたちもよくわかんないんすけど」
「まぁ、彩人は彩人だしってことで受け入れてます」
あ、だめだ。先生の頭から煙出始めた。それでも流石は大人なのか、現状を理解するために先生は頭を押さえながら俺たちに質問する。
「えー……っと。つまり、伊達くんは今は女の子ってこと?」
「そっすね」
「いや軽っ……んー、まいっか! 後は君たちの担任に任せることにするよ!」
「いや軽っ!?」
これが大人の順応力というものなのか。胸に付けるコサージュみたいなやつを俺たちに渡しながら投げやりな結論を出した先生に俺はそうツッコミつつも、俺と彩人は無事に校舎内へと入るのであった。
そして指定された教室に向かう途中――歩く彩人を見てざわつく校内に、俺は思わず笑ってしまう。
「……なんだよ」
「いや、やっぱ彩人って注目されるよなーって」
「中学も髪と目のせいでめっちゃ見られてたってのに、今年はそれプラス『女の子が男子制服着てる』だぜ……? 女子はともかく、男子の視線が辛い」
小さな声で会話する俺たち。周りから『あの子めっちゃタイプ』と男子から聞こえるたびに身を固くする彩人に、俺は同情の視線を送らざるを得なかった。
「……先が思いやられるな」
「てっちん助けてくれ……」
「どう助けろって言うんだよ」
そう俺が言うと、彩人は無言で俺の背中の方に行って顔を隠す。えぇい引っ付いてくるな、背中から良い匂いするわ柔らかい感触が当たってるわで脳がバグる!
ほら見ろ、周りから殺意の視線を感じるぞ!? 『邪魔……っ!』とか男からすっげえ重低音で言われたの初めてだわ!
「おい彩人……っ」
「すまんてっちん、しばらくこのままで」
「マジかよ……ん?」
俺の後ろに隠れている彩人が、小さく震えているのを背中越しに感じる。そう言えば、元々彩人は他人から注目されることが苦手だったっけか……
髪が白いことや目が赤いことを理由にいじめられてきた小学校のころの彩人は、誰かに注目されるということを極端に嫌う性格だった。
ずっと注目されてきたから、そういった視線には慣れたもんだとばかり思っていたが……やはり、根はあのころのままなのだろう。
「はぁ~、転ばないように気ぃ付けろよ」
「……っ、ありがとてっちん」
「お前のたっけえ顔面偏差値を俺で中和してやるからな!」
「ははっ、なんだよそれ」
おかしそうに彩人が笑うのを見て、いつもの調子が出てきたことに俺は安心する。
暗い顔すんなよ彩人、くさいセリフだが俺が側にいる。なっ?
◇◆◇
哲俊たちがそんな風にふざけあいながら教室に向かってる最中、校門では――
「あら、伊達さんとこの」
「あら~、おはようございます天道さん~。いつも彩人がお世話になっております~」
「いえいえ、うちの哲俊だって――」
天童家と伊達家の家族がばったりと出会っていたのだった。
母親同士がいつものように挨拶を交わしている中、妹の小鐘はきょろきょろと彩人の両親の奥の方を見渡してなにかを探している。
「そのぉ~……彩人さんは?」
「きゃー、おはよう小鐘ちゃ~ん! いやねぇ? 『てっちんと約束があるからっ!』って早めに出ちゃったのよ~、折角一緒に写真撮ろうと思ったのに」
「くっ、おのれおにぃめ……」
小鐘は下唇を軽く噛みながら、ここにいない哲俊に恨み言を呟く。我が子ながら兄妹揃って似た者同士だと笑いながら、哲俊の父の方も天童家に挨拶をした。
「おはようございます伊達さん。うちの哲俊も『家族と一緒は恥ずかしい』と……早めに行ってしまいました」
「おはようございます~。思春期ってやつですかねぇ~、成長を感じて嬉しくもありますが。やっぱり寂しいものです~」
「そうですねぇ……っと、早く行きましょう。前の席を取れないと、折角綺麗に撮ろうとビデオカメラを持ってきたのに、親御さんたちの後頭部を高画質で撮る羽目になってしまう」
そう哲俊の父が言うと、慌てて四人は体育館へと向かう。何とか前の方の席を確保した彼らは、ほっと一息をつきつつ入学式の開始を待つのであった。
――――――――――――――――
【後書き】
ラブコメってこれでいいんだろうか……?
悩みながら書いています……
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