第35話 スターゲイザー
神らしいスケールの破壊を引き起こす魔法だ。
天から降ってくる光は一切の容赦なく大地を焼き、雨のように降ってくる隕石は1発で地形を簡単に変えてしまうほどの威力を秘めている。
イザベラが即座に2人を回収してくれたので、俺はそれを尻目に風の権能を発動して隕石とレーザーを周囲に散らしながら防ぐ。完全に掻き消している訳ではなく、周囲に散らしているだけなので、どんどんと周囲の地形が吹き飛んでいくが……そこを気にするのは俺の仕事じゃないからな。
「やはり、権能を複数持つ力は伊達ではないか」
「そんなこと言ってないで手伝ってもらえませんかね?」
「妾が? 相性悪いぞ、そいつとは」
「消えなさい、もろとも」
一緒にね。
一切の容赦なく放たれる隕石とレーザーにちょっと辟易としているんだが。リリヴィアと違って攻撃に特化したグリナドールは、一度突破すれば倒すのは簡単そうだ。まぁ……その突破するのが難しいんですけど。
ここは、新しく手に入れた権能を使ってみるか。
生命の権能……生命の神リリヴィアから簒奪した生命の全てを操る権能。リリヴィアほどに便利な使い方ができなかったとしても、相応の力を持っていることには変わりない。
発動した生命の権能で、周囲に散らばる隕石の屑を集めてから……命を吹き込んでいく。星々の神グリナドールの力が込められた隕石から生み出される生命は、簡単に生み出す生命とは全く違う力を持っている。それだけ、神々が世界にもたらす影響と言うのは大きいということだな。生命の権能によって生み出されたモンスターは、俺の想像通りに組みあがる。
「さぁ、頼むぞスターゲイザー」
隕石の欠片から生み出した岩のゴーレムに
グリナドールは俺がスターゲイザーを生み出したことに驚いた様子を見せたが、すぐにリリヴィアの持っていた生命の権能であることを理解したのか、即座にビームを放ってきた。しかし、スターゲイザーはグリナドールが降らせた隕石から生み出したモンスター……つまり、グリナドールの魔力はしっかりと対策済みだ。
巨体に向かって放たれたレーザーを、スターゲイザーは一切気にすることなく身体に受けるが……全て周囲に弾かれていき、ダメージはない。初めて動揺したような顔を見せたグリナドールに向かって、逆にスターゲイザーがレーザーを放つ。
「っ!? 生意気……たかが被造物如き!」
「さて、俺もいるんだな」
「しまっ!?」
スターゲイザーにイラっとしたのか、グリナドールが魔力を滾らせた瞬間に俺は背後に移動してその身体を掴む。同時に、拳を振り上げていたスターゲイザーが巨体からは想像できない速度でパンチを繰り出し、グリナドールが殴り飛ばされる。
グリナドールを掴んでいた俺は、スターゲイザーの拳がグリナドールに突き刺さる直前に風で飛んで逃げたのだが……生み出したスターゲイザーは、想像以上の出力だな。やはり、グリナドールが降らせてきた隕石から生み出したってのが強くなっている原因かな。いや、生命の権能に俺が慣れていないのだからそれ以外は考えられないか。
「おっと」
思い切り地面に激突したグリナドールだが、どうやったのか知らないが特に目立った傷はなくふわりと浮き上がってこちらを睨み付けている。空から降ってきた追加の隕石とレーザーは、スターゲイザーが俺を守るように腕で受け止めてくれた。
ゆったりと動くスターゲイザーを見て、怒りの形相を浮かべたグリナドールは「運命」の権能を発動させる。恐らく、狙いは俺が生み出したモンスターであるスターゲイザーの運命を操って、なにかしらの動きを見せること。しかし……グリナドールの力から生み出されたモンスターとは言え、権能には絶対に堪えられないことが分かっているので、俺が風の権能を使ってスターゲイザーを守ってやる。
「……殺す!」
「口が悪くなってるぞ、っと」
頭上から極太のレーザーが飛んでくるのと同時に、グリナドールが周辺の小石を俺に向かって飛ばしてきた。頭上から飛んでくる攻撃はスターゲイザーが防いでくれても、横から飛んでくるものには自力で対処しないと駄目だよな。とは言え、俺には風の防壁があるので守りはばっちりだ。
イザベラはグリナドールとの相性が悪いとか言って、ひたすらにエレナさんと瑞樹さんを守る為に権能を使っているようだが、普通に戦うのが面倒だからにしか見えない。大体、その守っているエレナさんがちょくちょくグリナドールに向かって攻撃魔法を放っているんだから、イザベラだってなんかできるだろ。
「お前のような奴が、創世神の後を継いでこの世界の神になるなんて、私は認めない。創世神は私たちを、世界を安定させるために生み出した!」
「でも、それに従わなかったのはお前たちだろ」
「あれは自らの都合で、私たちを使おうとした。当然の報いよ」
「そんな考えだから、創世神から見放される」
そもそも、世界を生み出したなんて言われている創世神が、この世界を滅ぼさずに残しておいた理由はなんだ? 子供たちがこれだけ喧嘩して世界が滅びるかもしれないのに、そのまま放置したのは、それでも子供たちのことを信頼していたからとか、そんな風には考えられないのか? 考えられないから、こんなことになってるのかもしれないが。
「それを、お前のような、異世界からやってきただけの人間が!」
「……」
「私たちの命と共に、立場を奪おうなどと……不敬だ!」
不敬、ね。
でも、敬った結果が滅びそうになっているこの世界な訳だから、俺のやっていることは間違っていない。そもそも、俺をこの世界に呼び出さないといけないぐらいに悪くしたのは、神々なんだからな。これに関しては、イザベラだって似たようなもんだからあんまり言えないと思うし、それ以上に引きこもりもせずに戦ってばかりいた神々はもっと悪い。
グリナドールの両手から放たれたレーザーが、スターゲイザーの腕によって振り払われ、今度はスターゲイザーが目のような部位から極太のレーザーを放つ。
空を駆けるグリナドールはそれを簡単に避けてから再びレーザーの発射態勢に入ってから、俺がすぐ近くまで来ていることに気が付いて防御姿勢を取るが、それよりも早く俺の後方から飛んできたスターゲイザーの拳がグリナドールを吹き飛ばした。
うーん……俺、いらないか?
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