第17話

【ラリスタ視点】


「クソクソクソッ!!」


「ラリスタ、静かにしてくれ」


「こんな状況で!! 静かになんか!! できませんわ!!」


 私と王子様は、現在地下牢に閉じ込められていますわ。

 理由は……よくわかりませんけれど。


「なんでですの!? 私が!! そんなに悪いことをしましたの!?」


「……はぁ」


「ため息なんて吐いていないで、ここから脱出することを考えましょう!!」


「無駄なことに思考を費やしたくないんだ。死を待つまでの時間は、懺悔に費やしたいんだよ」


「本当に!! ふぬけですわね!!」


「好きに罵れば良いさ……。そうさ、僕は……僕が愚かだった」


 ブツブツと独り言をのたまう王子様。

 クソッ、こんなのは私の願った婚約者生活ではありませんわ……!


「どうしてですの!? 婚約者に憧れて、お姉様から婚約者の座を奪って、ちょっと汚職に手を染めただけですわよね!!」


 そんなちょっとの罪が、どうして死罪に繋がりますの?

 王族の婚約者なのですから、罪が軽くなると思っていましたのに!!


「本当に!! アノス様は使えませんわよね!!」


「……」


「返事もロクにできないなんて、ふぬけにも程がありますわ!!」


「……」


 怒りでどうにかなってしまいそうですわ。

 やりたかったことも沢山あります。

 できなかったことは数えられない程。

 こんな末路を辿るのなら、最初から……婚約者にならなければよかったですわ。


「おい、お前等」


 後悔していますと、兵士の方が牢の前へとやって参りました。


「あら、ついに釈放ですの? 数日間の監禁でしたが、身体の節が痛いですわ」


「その逆だ」


 兵士は懐から1枚の紙を取り出しましたわ。


「お前達の刑の執行日が決定した」


「なッ! 本当に刑の執行するだんて、正気ですの!?」


「今より一週間後、群衆の前で行うとのことだ」


「そ、そんな……私のかわいらしい首が、下等な群衆共にさらされますの!?」


「……民に愛された僕の結末が、こんなものだなんてね」


「それでは一週間楽しく過ごせよ」


「ちょちょっと!!」


 そう言って、兵士は帰って行きましたわ。


「……本当に、執行されちゃいますの……?」


 私の麗しい命が、たったの一週間で尽きますの?

 そんなの……信じたくないですわ……!!


「い、いやですわ……! 私はまだ!! 死にたくありませんわ!!」


「……ラリスタ、静かにしてくれないか?」


「どうしてアノス様はそんなに冷静でいられますの!?」


「……受け入れるしかないだろう?」


「無理ですわ!! だって……私たち、死ぬんですのよ!!」


「……今ならわかるさ、当然の報いだってことが」


 そんな……。


「私はアノス様の様に、達観は……できませんわ……!」


「それならせめて、静かに抗ってくれ……」


 真実みを帯びてくる”死”の恐怖に、私は一人で喚くことしかできませんわ。

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