第12話

「やっぱり、納得いきません」


 いつも通り王城の中庭のイスに座り、紅茶をすすりながら第二王子に告げます。


「だから、毎日告げているじゃないか! 僕はキミに一目惚れをしたのだと!」


「それが理解できないのです!」


 紅茶を啜りながら、怒気を若干含めて告げる。


「私は見ての通り、容姿は微妙です。それに第二王子のお兄様に婚約破棄を命じられた、傷物令嬢ですよ!」


「そんなこと、どうでもいいじゃないか! 世間の目が気になるとでも言いたいのかい!?」


「当然、気になります!」


 私は一人が好きな公爵令嬢です。

 ですけれど、世間の目が気になるのは仕方の無いことです。


「傷物令嬢の私を好きになるのも、容姿が微妙な私を愛するのも……理解できません!」


「恋愛に理論も論理も必要ない! 僕がキミを好きになった、それだけで十分だろう!」


「平民や下級貴族にはそれで十分かも知れませんが、私たちは上級貴族と王族。それが理由で恋愛が発展するなんて、あり得ません!」


 上級貴族と王族にとって、”恋愛”とは何かしらの策が混じっているものです。

 ただの恋慕から始まる結婚は、あり得ないのです。


「まぁ、まだ一週間しか経っていないからね。これから感情を揺さぶって、必ず僕のことを好きにしてみせるよ」


「ふふ、楽しみにしていますよ」


「それじゃあ、さっそくだけど……今日はこの本について語ろうか」


「あ! 『不思議の国のアリストテレス』ですね!」


「これは僕が大好きな寓話ぐうわの1つなんだ」


「私も大好きなんですよ! 1人の哲学者が迷宮に迷い込んで、自身の存在意義や感情の在処などを考えるところが特に!!」


「フフ、気が合うね」


 私たちが出会ってから一週間、すっかり打ち解けました。

 互いに趣味が読書というのもあり、打ち解けるのに時間はかからなかったです。


 ですけれど、やっぱり……まだ結婚というと早い気がしますね。


 今のところ、彼に対する評価は高いです。

 ですけれど、それはあくまでも”友人”として。

 恋人としては……まだ見ることができません。


 ですけれど、友人としてなら……これ以上の人は中々出会えないでしょう。

 私のインドアな趣味を理解してくれたのは、両親だけでしたので。


「それでこれなんだけど────」


「────リアラ?」


 第二王子と語っていると、二度と聞きたくなかった声が聞こえてきました。

 

「……アノス様」


 のそっとやってきたのは、第一王子であるアノス様。

 目の下に隈を作り、私の元へとやってきました。

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