第11話

「初めましてリアラさん」


 王城へ向かい、私は第二王子の部屋へとやってきました。


 第二王子の部屋は散らかっていまして、不潔で汚い印象です。

 床には羊皮紙、机の上には資料。

 どこをどうみても、汚いです。


 ですけれど、本が多いのは好印象です。

 ちらりと見えるタイトルを見ても、私が読んだことのある物と無いものが半々といった印象です。


「ええ。ごきげんようですわ」


 第二王子は第一王子とは違い、どこかはかない雰囲気の男性でした。


 髪は黒く肌は白い。

 身長は私よりも少しだけ高い程度。

 筋肉質ではなく、華奢きゃしゃな身体付き。


 病弱……とまでは言いません。

 ですけれど、どこか……頼りない雰囲気ですわね。


「単刀直入に言いますが、僕と婚約してくれませんか?」


「えっと……いきなりですわね」


「あ、ごめんなさい」


「いえ、構わないんですけれど……色々聞いてもよろしいでしょうか?」


「もちろんです!」


 瞳をキラキラと輝かせる姿は、かわいらしいですわね。

 あえて形容するなら……昔飼っていた愛犬を想起させます。


「えっと、まず……何故私を好きになったんですか?」


「好きになることに理由が必要ですか?」


「そういう哲学的な問答をしたいわけではないんですけれど……。自分で言うのも何ですけれど、私よりも妹の方がかわいらしいではないですか?」


「そうですか? 僕はリアラさんの方がかわいいと思いますよ?」


「そ、そうです……か?」


 生まれてこの方、”かわいい”なんて言われたことがないので、少々動揺してしまいますわ。


 私1人の時は”美しい”や”綺麗”という美辞麗句。

 妹といるときは、私に掛けられる言葉は皆無。

 そんな日々を送ってきました。


「で、ですけれど、一般的にはラリスタの方が美しいと思いますけれど?」


「世間一般の意見なんて、どうでもいいです! 僕はリアラさんの方がかわいいと思ったんです!」


「そ、そうですの……?」


 変わり者だという話を伺ったことはありますが、性癖も変わっていますのね。


 それに熱量が凄まじいです。

 ここまで言い寄られたことがないので、かなり動揺しています。


「もちろん、今すぐ婚約してくださいなんて言いません!」


「変わっていますのね。とりあえず、政略婚約を結ぶ殿方も多いというのに。あなたのお兄様の様に」


「僕は兄のように愚鈍はありませんので!!」


「そ、そうですの……」


 熱量が凄まじいですわ。


「僕と一ヶ月、友達になってください! その後、僕のことを気に入ってくだされば、婚約しましょう!」 


「そ、それなら構いませんわ」


 どこか言いくるめられるように。

 私は熱量に負けてしまいましたわ。

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