第7話

【ラリスタ視点】


「こんなの、思っていたのと違いますわ!!」


 いつも通り剣を振るっている最中、ついにガマンの限界が来てしまいました!


「ラリスタ様、どうかなされました?」


 私の元へやってきたのは、屈強な男性。

 彼は騎士団長、この国を守る獅子騎士団を率いるリーダーです。


「どうもこうもないですわ!! なんで、私がこんなことをしなくてはならないんですの!!」


 剣を地面に叩き付け、腕を組みますわ。

 もうプルプルな腕を組むのは、少々苦痛ですけれど。

 ですけれど、卑賤ひせんな騎士団長相手に、弱い態度は見せられませんもの!!!!


 騎士団長は所詮、平民出身。

 そんな男に対して、弱い態度を取ってしまえば……貴族の恥ですから!!


「こんなこと……と申しますと?」


「わからないんですの!?」


「……申し訳ございません」


「全く……これだから平民は……」


「……ラリスタ様、ご機嫌を損ねた訳を教えていただけませんか?」


「……ちッ!」


 地面に叩き付けた剣を、思い切り蹴飛ばしますわ。

 ……痛いッ! 蹴った脚が剣にぶつかって、痛いですわ!!

 なんで、剣は鉄でできていますの!?


「私は! 王子様の婚約者ですの!!」


「ええ、存じております」


「そんな婚約者の私が! どうして!! 毎日こんな厳しい訓練を積まなければなりませんの!!」


「……と、言いますと?」


「意味を理解できないんですの!? 脳みそ詰まっていますの!?」


「……申し訳ございません」


 これだから低脳な平民は嫌いですの!

 毎日毎日剣を振るって、無駄に筋肉を肥やす愚民共には理解できないでしょうね!


 私は婚約者になってから、毎日のように厳しい訓練を受けています。

 朝は華道から始まり、昼には剣術と勉学。

 夜には家事全般。


 こんなの、私の思っていた婚約者生活とは全く違いますわ!!

 王子の婚約者とは毎日自堕落な生活を送り、王子の財産で暮らせる者ではないんですの!?


 家事なんて、侍女にやらせればいいんですの!!

 剣術なんて、騎士団だけで十分ですの!!

 華道や勉学なんて、華道オタクやガリベンだけがすればいいんですの!!

 

「婚約者である私が、どうしてこんなに苦労しないといけないんですの!!!!」


「私にそう言われましても……」


「話になりませんわね!! これだから教養の無い平民は嫌いですわ!!」


 剣を再度蹴飛ばし、離れようと────


「痛い!! どうして剣は鉄でできていますの!?」


「鉄でできていなければ、敵を倒せないからですね」


「知っていますわ!! そんなこと!!」


 私をバカにして……!!


「もういですわ!!」


「ラリスタ様、どちらに行かれるのですか!?」


「もうしんどいので、今日の訓練は終了ですわ!!」


 あーッ! 腹が立ちますわ!!


「こんなハズじゃなかったのに!!」


 私の叫びは、悲痛に響きましたわ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る