◆第一章④
「情報を死者から引き出したい。死人に口なしで重要な事実も
「力を貸りる代わりに
「理解が早いな」
青流は満足げにうなずいた。
「俺が噂どおりの葬送師だなんて言ってない。そうだとしても、
「昔、有能な葬送師がいた。魂を呼ぶその力を貴族たちも欲しがった。男の名は
他人の口から初めて聞く、父親の名前。
「もちろん
父親の名を知られているのなら、もう
「金が欲しくてやってるわけじゃない」
「正義か。さっきも見知らぬ女を助けていたな。ならば
首を横に
「正義なんかじゃない。俺は──」
言いかけて、言葉を飲み込む。
知らない男に話すことではない。
青流はこちらをじっと見ていたが、意を決したように立ち上がった。背中を向け、ゆっくり息を
「これは御史としての依頼ではない。私個人がお前を必要としている」
こちらを向き、やや低めの落ち着いた声で続けた。
「人を
強固に守られている秘密。
それを隠せる者がいる。
大きな力を使って。
同じだ。
人を捜している。
だけど自分一人では限界がある。この力を使うことで
使えるか。
この男の力を。
時間は永遠ではない。魂を呼び戻す術を使い始めてもうすぐ二年。まだ何の情報も
手を打たなければ。
完全に消えてしまう前に。
「俺も、人を捜している」
父親はなぜ、どのように死んだのか。
調べてもわからないということは、隠されているのだ。
知っている人から真実を聞きたい。
青流の表情が変わった。目を見開いてから、理解したという顔。そして、同志を見つけたかのような喜び。
「
「条件がある。俺を調べたならわかるだろうけど、この力のことが安易に広まれば父と同様に危険な目に
強い視線で真っすぐ見る。
青流は笑みを深くした。
「私と対等とは、よく言えるな」
李一族の男と、身寄りのない平民。その気になればこの場で卓明の首をはね、適当な罪をなすりつけて葬ることも可能だろう。本来ならこんなところで目線を合わせて語れる相手ではない。
「実際、俺の代わりはいないんだろ? 俺が断って困るのはそっちでは」
同じ技を使える人間がいると聞いたことはない。
自分のほかにはいない。
「そうだな。こう見えて
青流は
いや、信頼しきれなくても、同じ
手を差し出してきた。
「改めてお願いする。その力を貸してほしい。私の命も預けよう。私がお前の裏の仕事を黙認するのではなく、
青流が何を捜しているかはわからないが、大きな力が立ちはだかっているのなら、暴くのは危険かもしれない。
命の預け合いだ。
立ち上がり、差し出された手に
「よろしく」
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