◆第一章③
青流は卓明に視線を移した。
「あなたでしたか。聞きたいことがあるのだが、いいだろうか」
外には男が二人いる。護衛だろう。
「どうぞこちらへ」
卓を挟んだ向かい側の席を手で示す。青流は外に立つ護衛と視線を合わせてから扉を閉めた。
「お茶をお持ちしますね」
蘭蘭の言葉に首を横に振る。
「いえ、お構いなく。少し込み入った話があるので、申し訳ないがしばらく席を外していただけるだろうか」
「わかりました」
うなずいて、蘭蘭はすぐに隣室へと姿を消した。ただならぬ話だと察したのだろう。そもそもここは高貴な人間が来る場所ではない。
青流が両手を胸の前で重ね頭を下げたので、卓明も同様に礼をした。
着席する。目の前に
「
「はい」
「遺族たちに代わり、さまざまな手配をし、場を整える。葬儀は他国と大差ないが、葬送師という職は我が国独自のものだ」
卓明はうなずいた。
都から
国内にはいくつかの葬送屋があり、ここはそのひとつだ。
青流は静かな口調で話し続ける。
「死者の
そのとおりだ。
もっとも遺族にとっては信じたいところだろう。魂が戻ってくるかもしれないと。目の前の男は、親しい人との死別を経験していないのか、現実的な考えなのか。
「ただ、本当に魂を呼び戻せる者もいる、と
「……噂、ですか」
「
卓明は思わず息を
御史とは
「卓明という葬送師に頼むと魂を呼び戻してもらえる。そんな噂が密かにある。師長は知っているのか?」
本当か? とは聞かなかった。
確信しているのだ。
依頼者には口止めしているが、完全に
「そうだとしたら
「その力を私に貸してくれないか」
「力を、貸す?」
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