◆第一章②
大通りを東に曲がり、細い通りを真っすぐ進むと職場があった。看板はなく、見た目は
扉を開けると、蘭蘭が腕を組んで立っていた。
「遅刻は何度目でしょうか」
色白の
「……数え切れないほどです。すみません」
蘭蘭は大きなため息をついたが、組んでいた腕はすぐに解いた。
「何か食べたの」
「何も」
「
うなずいて返すと、蘭蘭は
室内の奥は一段高くなっていて
ほかに所員は二人いるが、仕事先に向かったのか姿はない。
卓明は立ち上がり、頭を下げた。
「すみません、
「いや、今日は卓明の仕事は入ってないからね。そういえば、半月ほど前の仕事、
「はい」
「聞いたかい? 成さんのご子息の子龍さんは自殺ではなく殺害されたと調べがついたらしい。幼なじみに
「そうですか」
一度は自殺と断定されたのだから
蘭蘭が来て、包をのせた
「母さんの手作りだから
「ありがとう」
白いふわふわとした生地に
師長が入口の前で
「じゃあ、私は外を回ってくるから」
個人宅や店を回り、
「いってらっしゃい、お父さん」
「いってらっしゃい」
父親を見送った蘭蘭は向かいの席に座り、
「
視線が気になるが、もぐもぐと頬張る。
自宅よりも、ここで食べることの方が多い。蘭蘭の母親、
「私ももっと料理覚えようかな。やっぱり
蘭蘭は片手で果実を握り
足音が近づいてきて入口の前で止まった。
来客かもしれない。
卓明は
蘭蘭が開けた。
「いらっしゃいませ」
立っていた男の顔を見て、卓明は目を見開いた。口に何も入っていなければ「あ!」と声を出しただろう。
乱暴な男たちを
男がこちらに視線を向けた。
ごくんと包を飲み込んでから立ち上がり、軽く頭を下げた。
「さきほどはありがとうございました」
蘭蘭が二人の顔を
「知り合いなの?」
こんな高貴な
という疑いの目。
男は蘭蘭を見て微笑んだ。
「
「師長は外出しておりまして。ご
「いえ、卓明という者に用があって」
「卓明? 卓明なら目の前にいますけど。え、知り合いじゃないの?」
混乱した蘭蘭は両方に何度も顔を向ける。
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