第46話 マリエラの思い

 マリエラはフルールの問いかけに真面目に答えていた。

「マリエラはお兄様のことをどう思っているの?」

「えっ、ペテル様のことですか?フルール様のお兄様だと···?」

「違うわよ。男性としてどうかってこと?」

「はい。ペテル様は頭がよく、お優しくて頼りになる方です」

「だーかーらっ」

「マリエラはお兄様のこと好きなの?嫌いなの?」

「はい。好きです。尊敬しています」

「んーっダメだ···。例えばお兄様がお嫁さんを連れてきたらどうなの?」

「おめでたいことだと思います。ペテル様はお優しいので羨ましく思います」

「そうね。羨ましいわね。心からお祝いできるのかしら?」

「はい···出来ると思います」

「ふーん」

 バドゥールが以前ペテルとミトラのことを言っていて、マリエラが兄のことをどう思っているのかフルールは気になっていた。


 マリエラはフルールの従者として仕え、立場の違うペテルに心を寄せるのは、間違っていると思っていた。

 最初に会った時から話が合い、一人っ子のマリエラはペテルのことを、優しくて頼りになる兄のように思っていた。

 マリエラは自分が欲を出さなければ、ずっと兄妹のような関係でいられると思っていた。

 ペテルが幸せならそれでよかった。妹のような存在であっても側にいるだけでよかった。


 フルールの言っていたことが耳から離れない。

 ペテル様がお嫁さんを連れてきたら、平然と笑っていられるのだろうか?

 マリエラは急に胸が苦しくなり、涙が出そうになった。これ以上望んではいけない。

 私は孤児だから、ペテル様には何もして差し上げられない。

 ペテル様には相応しい女性がいるはず。

 マリエラは自分に言い聞かせ、涙を流し、心に蓋をした。


 フルールは問い詰めてしまったマリエラのことが心配になり、様子を伺っていたが、普段と変わりなく接してくれていても、どこか寂しげな感じがして気になっていた。

 フルールは悪いことしてしまったと反省していた。


 フルールはバドゥールにマリエラのことを話し、どう謝っていいのか相談していた。

「マリエラちゃんのことはそっとしておいた方がいいよ。ペテル君も早く自分の気持ちに気がついてくれると話は早いんだけど、こればっかりは口出し出来ないしね。ミトラ君のように積極的にならないとね」

「わかりました。マリエラのことはそっとしておきます。ミトラ様もマリエラのことが好きなの?」

「ああ、分かりやすいだろ。しょっちゅうマリエラの顔を見に来ているじゃないか。ははは」

「マリエラはモテモテね」

 フルールはバドゥールと笑い合っていた。

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