第44話 フルールの話

 フルールとマリエラは交代でペテルに、男爵家であったこと、メルカトールとのこと、ソティラス家のこと、グレンビー商会のこと、ティアオ劇団のことなど沢山の話をしていた。

 ペテルから話を聞いていたミトラだったが、幼い二人が経験するには予想もつかないような話の内容に目を丸くしたり、涙ぐんだりして聞き入っていた。

 そして自分よりも年下の女の子が二人でよく頑張っていたのだと思った。


 ティアオ劇団の特別な計らいで、ペテルとミトラは1日泊めてもらうことになり、兄妹たちの話は夜遅くまで続いていた。

 朝食も一緒に取ることができ、ペテルとミトラは、翌日リュードの街で会う約束をして、グレンビー商会に帰って行った。


 リュードの街では、ペテル、ミトラ、フルール、マリエラ、バドゥールの五人で遊びに行くことになった。

 ペテルは劇団の団長メネスからバドゥールの経歴について説明があった。

 ペテルは何事もないと思うが、バドゥールが一緒だと安心して街めぐりを楽しむ事が出来ると思った。

 フルールは嬉しくて仕方がなかった。

 大好きな人たちに囲まれてはしゃいでいた。


 ミトラに案内されたお店にまだ行ったことがなかったフルールたちは、新たな街の魅力に興奮していた。

 一休みにとオープンテラスのあるカフェで、休憩していると、フルールは頑張って練習してきた成果を兄に見て欲しかったので、マリエラは持ってきた笛を出し音楽を奏で、音に合わせて踊って見せた。

 オープンテラスのお客さんだけでなく、お店の外からも見物人が現れ、少し騒ぎになってしまった。


 なりやまぬ拍手にペテルたちも驚き、みんなで頭を下げた。

 帰りにカフェの人にお騒がせしたことを謝ると、いつでも来ていいよと言われ、少し驚いたがフルールはとても嬉しかった。

 ペテルはフルールとマリエラに上達した踊りと笛を褒め、ミトラは二人に羨望の眼差しを向けていた。

 ミトラは無意識にマリエラを目で追っていた。


 ペテルはミトラの様子に気がつき少し嫉妬していた。

 妹のように思っているマリエラに対して、特別な感情がある訳ではないとペテルは考えていたが、気持ちの中のモヤモヤするものは晴れなかった。


 ペテルとミトラの様子を見ていたバドゥールはお節介だとは思ったが、マリエラにそれとなくペテルに対しての気持ちを聞いてみようと思った。

 バドゥールは妹のようなフルールとマリエラに幸せになって欲しかった。

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