第43話 ペテルの来訪
フルールたちはお世話になったグレンビー商会を出て、ティアオ劇団に入団することになった。
劇団の寮はマリエラと同じ部屋にしてもらい、劇団員と一緒に踊りの練習や、演技の練習もさせてもらっていた。
毎日、充実した日々を送っていた。
フルールの体調もよく、まだ遠くの方は見えにくいようだが、マリエラの手を借りなくても普段の生活が送れるようになっていた。
オールリウス伯爵領に来てから数ヵ月が経ち、専門学校の長期休暇に入った兄のペテルが、友人でグレンビー商会の三男であるミトラとともに、王都から伯爵領にやって来る日が近づいてきた。
フルールは兄に会うのが待ち遠しい。
ドゥラーク男爵の動向をみてノクスの街に帰る予定だと、マリエラから聞いていたが、劇団での日々の生活が楽しくて、家族には会いたいと思うが、フルールは今の生活が気に入っていた。
お給料をもらい劇団の人やマリエラと、リュードの街へ行くのが楽しくて仕方なかった。
特に10才上の吟遊詩人のバドゥールと仲がよく、兄妹のように過ごしている。
バドゥールはフルールのことをルーと呼び、フルールはバドゥールのことを
「もうすぐルーの兄さんが来るのだろう?早く会いたいだろう?」
「そうね、会いたいわ。
「マリエラと四人で街に遊びに行こうよ」
「楽しみね」
バドゥールとフルールは並んで朝食を取りながら話をしていた。
ペテルはミトラとともにティアオ劇団にやって来た。
久しぶりに会うフルールは少し背が伸びて、顔色もよく笑顔で迎えてくれた。
ペテル、マリエラ、フルールは三人で抱き締め会った。
隣で見ていたミトラは、どんな時も冷静沈着なペテルが妹を前にして見せる緩んだ顔に驚き、羨ましいと思った。
「フルール、マリエラよく頑張ったな。元気そうでよかった」
「お兄様、私お話したいことがたくさんあるの」
「ああ、ゆっくり聞くよ。フルール、目は大丈夫なの?」
「はい。マルク先生のお薬がよく効いて、マリエラのお手伝いがなくても、何でも出来るようになったのよ」
フルールはペテルに自慢げに話をしていた。
マリエラは隣で涙目になりながらも、大きく頷いていた。
「マリエラ、ありがとう。君のお陰だ」
「私はフルール様のお手伝いをしていただけです。ペテル様と会えて安心しました」
マリエラの目から一筋の涙が流れた。
マリエラの今までの働きに感謝し、ペテルは彼女の背中を優しく撫でていた。
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