第37話 伯爵領への旅
ソティラスの屋敷にお世話になってから一週間が経っていた。
ジャンの手紙によるとドゥラーク男爵はフルールたちの追跡を諦めたようだった。
ジャンの手紙を受け翌日フルールたちは、オールリウス伯爵領に向かって旅立つことになった。
「ソティラスおじさん、ミスティおばさんお世話になりました」
「寂しくなるわね。フルールちゃんマリエラちゃん気をつけてね」
「メルカトール、マルク医師、フルールちゃんたちの事を頼みます」
「はい。必ず無事に伯爵領までお送りいたします」
「念のため、リュードの街まで少し離れて護衛を就けている。無理のないように」
「かしこまりました」
各々が挨拶し出発の時間が迫っていた。
ソティラス家族は、フルールとマリエラを抱きしめ別れを惜しんだ。
馬車は伯爵領に向けて出発した。
「寂しくなるわね」
「そうだな···」
「あなたオリビアさんのことが好きだったのね」
「···何を···いきなり···」
「あなたは本当に正直ね。過去のことに妬いているのではないわよ。私、女の子が欲しくなったわ」
「···えっ。何を···」
「息子たちのやんちゃが収まってからゆっくり考えましょうね」
「そうだな。それは賛成だ」
「まあ、ふふふ」
ソティラスとミスティは笑い合いながら手を繋ぎ家に入って行った。
使用人たちもさんざん可愛い女の子の姿を見せつけられ、ソティラス夫妻に女の子が生まれることを期待していた。
フルールたちは予定通り、デンスの町から半日で伯爵領に着くことができた。特に問題もなくスムーズな旅だった。
伯爵領に入って直ぐの町で一泊し、リュードの街まではあともう少しだった。
ミトラ・グレンビーはリュードの街で商会をしている家の三男で、ペテルは王都の専門学校で一緒に学んでいる仲間のうちの一人だった。
友達のペテルから妹のことを相談され、力になりたいと自ら進んで実家に掛け合ってくれた。
女兄弟のいないミトラの家族にとって女の子は大歓迎のようで、二つ返事で了承を得ていた。
三ヶ月後の専門学校の長期休暇の時に、ペテルを伴って王都から帰省するつもりでいた。
メルカトールはグレンビー商会の事をよく知っていて、屋敷には迷わずに到着した。
メルカトールとの別れの時間が近づいていた。
メルカトールは思いきって今までの事を包み隠さず、フルールとマリエラに打ち明けることにした。
「おじさんは悪い人ではないわ。困っていた私たちを助けてくれたもの。ねえマリエラ」
「はい。その通りです。あのまま男爵邸にいたらどうなっていたか···リュードまで無事に送っていただき、ありがとうございました」
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