第34話 ソティラス家の食卓

 ソティラスは「お腹がすいただろう?」といって、暖かい食事を出してくれた。

 子どもでも食べやすくカットした肉や野菜が入った煮込み料理と、林檎の香りのついた果実水、ふかふかの白いパン、デザートは桃のコンポートだった。

 ソティラスは食べやすく消化のよいものを用意してくれていた。


 お腹がいっぱいになり眠そうな二人に、夕食まで同じ部屋で休ませるよう、使用人に指示を出していた。

 フルールとマリエラは同じ部屋を喜び、お揃いの部屋着を用意してもらい、どちらが窓側のベッドに寝るか楽しそうに相談していた。

 気疲れもあったのかいつの間にか、同じベッドで二人は手を繋ぎすやすやと眠っていた。


 明日は伯爵領で有能な医者が来ることになっている。

 フルールのこと手紙で知ったソティラスは、葡萄を食卓に出すことを控え、身の回りの物を整え、早くから伯爵領に医者の手配をしていた。


 夕食の時間になりフルールとマリエラはソティラス家族の食卓に招待してもらった。

 服を着替え髪をセットしてもらい、マリエラとフルールははしゃいでいた。


 貴族の家ではないから、マナーは気にしないでねとソティラスの奥さんが言ってくれた。

 ソティラスの奥さまのミスティさんは穏やかで優しそうな女性だった。

 五才と三才の息子さんは別室で食べているようで、後でお会いすることになっている。


「いただきます」

 お祈りを捧げ食事が始まった。

 マリエラはフルールにスープカップの位置を教えていた。フルールが一人で食べられるように、スープはカップに入っていて温度も温めにしてあった。

 マリエラは自分のスープに手をつけず、美味しそうにスープを飲むフルールを見ていた。

「マリエラちゃんも召し上がって」

 マリエラは頷き、慌ててスプーンを持ちスプーンを飲んだ。芳醇な野菜の香りとベーコンの香ばしい香りが鼻の奥に広がった。

「美味しいね」

 フルールはマリエラの方を向いて嬉しそうな顔をしていた。


 フルールのお料理はワンプレートになっており、温野菜、魚のポワレ、チキンのコンフィが一口サイズに切ってあり、フォークですくって食べられるようになってあった。

「もう一度スープが飲みたいです」

 フルールは恥ずかしそうに、ミスティさんの方を向いて言った。

「まあまあ。気に入ってくれたのね。嬉しいわ」

 ミスティは喜んで、給仕にスープのおかわりを持って来させた。

「気に入ったものがあったら、遠慮しないで言っていいんだよ」

「ありがとうございます」


 林檎の果実水も背の高いガラスの食器ではなく、ティーカップに入っていた。

 マリエラはソティラスの心遣いが嬉しかった。

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