第18話 王都巡り

 ルアイ夫人はフルールの顔の傷のことをオリビアに聞いていたが、明るく振る舞っているフルールを見て安心していた。

 ルアイ夫人も幼馴染みの娘のことが気になっていた。


 子どもたちは意気投合し、翌日はルアイ夫人の案内で、オリビアと子どもたちは王都のお店を回った。

 珍しい雑貨や服、綺麗で美味しいお菓子など、子どもたちははしゃぎ喜ぶ姿に、大人たちは満足していた。

 王都にいるペテルは学校と寮の往復のみで、勉強漬けで真面目な彼は、街に出たことがなく、良い息抜きができていた。


 オリビアとペテルは、フルールとマリエラをサルタのところに送って行った後、王立図書館に出掛けて行った。帰りも迎えに来る予定だった。

 二人はサルタに駆け寄り、挨拶をすると抱き締め合った。

「踊りの練習はしているの?」

「はい。毎日練習しています」

「凄いわね。じゃあ早速踊ってみましょうか」

「はい」

 フルールはサルタと踊るのが嬉しくて仕方なかった。


 テンラム舞踊団の楽器演奏者がやってきて、ティン・ホイッスルを吹いてくれた。

 お祭りの時は弦楽器だったが、今日は笛を演奏してくれた。

 踊りが得意ではなかったマリエラは、ティン・ホイッスルの音に魅せられ、自分にも出きるのか聞いてみた。

 演奏者はもうひとつあった、ティン・ホイッスルをマリエラに貸してくれ、教えてくれるようだった。マリエラは喜び、熱心に練習をしていた。


 マリエラが演奏して、フルールが踊る。

 サルタは笑みを浮かべ二人を見ていた。

 いつの間にか周りには、テンラム舞踊団のほぼ全員が集まり彼女たちを見ていた。

 舞踊団の人たちは、まだ幼いが彼女たちの堂々とした演舞に惹き付けるものを感じていた。

 演舞が終わると拍手喝采だった。


「たくさん練習したのね。頑張ったわね」

「ありがとうございます」

 サルタは優しく声をかけると、フルールは恥ずかしそうに俯きながら、返事をしていた。

「今のままでも上手なんだけど、手の先や足の先にも気持ちを込めるともっと良くなるわ」

 サルタは言いながら、直ぐに踊って見せた。


「そうね。手のひらを上にするのか下なのか。指先はどちらに向けるのか」

「足を踏み出すときは、真っ直ぐ踏み出すのか、外側からなのか内側なのか。ゆっくりなのか、早くなのか」

 フルールはサルタの踊りを瞬きもせずに見入っていた。


 踊り終わるとサルタは微笑んでフルールの手を取り、

「フルールちゃんは本当に踊りが好きなのね」

 といって頭を撫で抱き締めた。

 フルールはサルタの心地よい暖かさと香りにうっとりしていた。

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