第13話 フルールの気持ち

 ペテルとマリエラはフルールの気持ちを聞き、複雑な気持ちになった。

 顔の傷を気にしていたことは、分かっていたつもりだったが、人前に出ることにここまで、躊躇っていたのかと思うと、二人は胸が痛くなった。


 この先少しでもフルールが、人前に出て自然に振る舞えるようになれば、彼女の心の傷は癒されるだろうか。

 かえって関心を集め、好奇な目でみられ傷つきはしないだろうか。


 ペテルとマリエラは同じようなことを考えていた。

 元々天真爛漫で、活発な性格のフルールは、傷を受けてから今まで、たくさんの我慢をしてきたのだろう。


 ペテルはフルールに、

「三人で舞踊団の女性に会いに行こうよ」

「でも、兄さんとマリエラの露店を見て回るのを、邪魔したくないわ」

「時間はあるさ」

「露店も三人で見て回ろう」

「ありがとう。兄さん、マリエラ」

 ペテルの言葉に大きく頷いたマリエラも、フルールを想う気持ちは、ペテルと一緒だった。


 舞踊団の演目も終わり、控え室に戻った舞姫たちに会いたいのは、フルールたちだけではなかった。

 外にはたくさんのファンたちが、控え室の周りを取り囲んでいた。

 子どもたちだけではどうにもならなかったので、今日は女性に会うのは諦め、お祭りの露店を回ることにした。


 ペテルは、ノクスの街の有力者である父のジャンに相談するつもりでいた。

 父の力は借りたくなかったが、フルールの為なら何だってやるつもりでいた。


 露店では普段買えない珍しい物もあったので、お互いにプレゼントしてみたり、おやつを買ったりして三人はもらったお金を遣い、時間を忘れて楽しんだ。

 ペテルは専門学校に入る前に、三人でよい思い出ができてよかったと思った。


 ペテルは家に帰ると早速『春咲きまつり』での事をジャンに話した。

 ジャンはしばらく考え、テンラム舞踊団に話を取り付けることを約束してくれた。

 三日間ある祭りの最後にも舞踊を披露するので、彼らはしばらくノクスの街に滞在するようだった。


 夕食の後に、楽しそうに話し、手振り身振りで踊りの真似をするフルールの姿を見て、ジャンやオリビアにも久しぶりの笑顔が戻った。

 お祭りの夜らしく、家の中は賑やかだった。


 翌日早速ジャンは、お祭りを取り仕切っている者に連絡を取り、自らがテンラム舞踊団に会う予定を取り付けていた。

 テンラム舞踊団の団長は快くジャンを迎え入れてくれた。

 国王は舞姫サルタの踊りの実力を認め、さらに表裏のない彼女の気性もお気に入りだった。

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