第10話 フルールの従者

 マリエラは宿屋の女将さんにジャンの家に行くことを話した。

 女将さんは喜んでくれた。


 女将さんと話をして、明後日には宿屋を出て、ジャンの家に向かうことになった。

 持っていく荷物もなく、マリエラはギリギリまで宿屋の手伝いを続けた。

「マリエラ行っといで。たまには顔を見せにおいで」

「女将さん、皆さんお世話になりました。また、顔を見せに来ます」

 マリエラは深々と丁寧にお辞儀をし宿屋を後にした。


 ジャンの家に着くと、奥様と娘さん、ジャンが出迎えてくれた。

「マリエラといいます。今日からよろしくお願いします」

 マリエラが挨拶すると、

「こちらこそよろしく」

 と奥様と娘さんが挨拶を返してくれた。


 リビングのソファーに座りまずジャンと話をした。

「一度ソリスに帰ってマリエラの家の様子を見てくるのと、必要な荷物を持って来れたらと思うのだが、一緒に行ってくれるかな?」

「はい。私も気になっていましたので、助かります」

「そうだな。わたしは一緒に行けないが、供人をつけるので行っておいで」

「ありがとうございます」

 マリエラはソリスの実家が気になっていたので、ジャンの心遣いがありがたかった。

 お金もなく、子ども一人ではソリスには帰れなかったので、両親との思い出の品を持って来れるが嬉しかった。


 ジャンは娘のフルールを紹介した。

「娘のフルールだ。この娘はマリエラといって、今日からフルールの身の回りの世話をしてもらうことになった」

「 マリエラです。フルールお嬢様よろしくお願いします」

「フルールです。マリエラさんよろしくお願いします」

 フルールは下を向いて恥ずかしそうに答えた。

 マリエラはフルールを見て、愛らしい娘さんだなと思った。

 母のオリビアは2つしか違わないマリエラのことを、しっかりした娘で安心した。


 ジャンはフルールとマリエラを見ていたオリビアと顔を合わせ頷き合った。


 翌日マリエラはソリスの町に向けて、供と一緒に旅立って行った。

 帰りは半月後になるだろう。


「フルール。マリエラのことをどう思う?」

「お姉さんが出来たみたいで嬉しいです」

「そうね。しっかりしたいいだわ」

 オリビアとフルールはマリエラのことをとても気に入っていた。

 ジャンはマリエラの両親のことをオリビアとフルールに話をした。

 二人は驚いていたが、深く頷きマリエラに寄り添うことにした。


 兄のペテルはしばらく図書館に通っており、マリエラとは夕食の時に、軽く挨拶をしただけだったので、ジャンはソリスの町から帰り、働くことになってから、マリエラと話せる機会を作ろうと思っている。

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